3. 8. 下痢症

3. 8. 1. 院内発症(入院後4日目以降)の下痢症

ポイント:
原則として、治療開始前にかならず便検体を得る。便はスワブではなく、小指の先ほどでいいので便そのものを提出する。

  1. 典型的な症状:以下がある場合にはワークアップを開始する
    1. 1日3回以上の水様便
    2. 腹痛、右下腹部の圧痛(回盲部及び上行結腸が侵されやすい)
    3. 発熱など
  2. 院内発症の感染性腸炎はC. difficile感染症が殆どである
  3. 市中の消化管感染症の起因菌は、院内ではまず問題とならない
  4. 便のC. difficileトキシン迅速検査および便培養(検査室にはC. difficile感染を疑うことを予め必ず伝え、嫌気培養をオーダーする)
  5. ただし上記の検査はいずれも感度が低い(50%程度)であるため、臨床的に疑われる場合は検査陰性でもC. difficile感染症に対する治療を開始する。
  6. 院内発症の下痢には非感染性の下痢症も多いため、その存在も否定しておく(薬剤性・経管栄養、放射線治療など)

起因菌

初期治療

Clostridium difficile

Metronidazole 500mg 8時間毎
もしくは
Vancomycin散 125mg 6時間毎内服

上記のいずれにおいても必ず10日間は治療期間を確保する。

感染診療の手引き ©2006 Norio Ohmagari.