3. 11. Febrile neutropenia(好中球減少時の発熱)

ノート;

  1. 好中球減少状態で発熱が見られたら、必ず血液培養2セットおよび必要な培養用の検体を採取して直ちに抗菌薬を開始する⇒ 内科的Emergencyである
  2. 初期治療には抗緑膿菌作用を有するβラクタムを使用し、これにアミノグリコシドを併用してもよい
  3. 耐性グラム陽性球菌のハイリスク例ではVancomycinの使用を考慮する
  4. 抗菌薬開始後3−5日目で評価を行い、Focusが明らかとなっている、あるいは解熱しない場合には適宜抗菌薬の変更や追加を考える

起因菌

初期治療

Pseudomonous aeruginosa
E.coli
Klebsiella
Proteus
Enterobacter
Serratia

Staphylococcus aureus(MRSAも)
Enterococcus

Bacteroides
Clostridium

Candida
Aspergillus

Cefepime  2g 12時間毎
Ceftazidime 1g 6時間毎

(嫌気性菌の関与が強く疑われる場合、上記にClidamycin 600mg  8時間毎を加える⇒ImipenemもしくはMeropenem 0.5g 6時間毎を使用する方法もある⇒ ただし抗菌薬適正使用の観点から適応症例の選択には十分な注意を払うこととする)

注意:
耐性グラム陽性球菌(ペニシリン耐性肺炎球菌、MRSA、MRSEなど)感染のハイリスクである場合は、上記にVancomycin15mg/kg 12時間毎を加える
Vancomycinの適応例
(1)中心静脈カテーテル感染が強く疑われる、(2)ペニシリン耐性肺炎球菌やMRSAを保菌している、(3)血液培養でグラム陽性球菌陽性であり、菌名や感受性試験の結果がわかっていない場合、(4)ショックなど血行動態が不安定、(5)Viridans streptococcus敗血症のハイリスク例

上記の治療で反応無く、顆粒球減少状態が続く場合→Fluconazole 400mg/日を加える、またはAmphotericin Bを加える

表:顆粒球減少時の発熱で来院した患者の来院時のスコアリングシステム
(IDSAガイドラインより)

特徴

スコア

症状の程度a
 症状なし 5
 軽い症状 5
 中等度以上の症状 3
血圧低下なし 5
慢性閉塞性肺疾患なし 4
固形癌である、あるいは真菌感染を有さない 4
脱水なし 3
発熱発症時には、入院していなかった 3
年齢60歳未満b 2

注意:理論的な最高点スコアは26点.21点以上の患者は低リスクであると判断できる
aこのうち一つの症状を選択
b16歳以下には適用されない。来院時の単球が100/mm3以上であること、合併症がないこと、胸部X線が正常であることで、小児患者は重症細菌性感染のリスクが低いといえる。

感染診療の手引き ©2006 Norio Ohmagari.