@NIFTYのバイオフォーラム(http://www.nifty.ne.jp/forum/fbio/)などでも活躍されている三品さんが、以前バイオフォーラムで書かれたHoustonについての発言に加筆修正をして、Houston研究留学ガイドとして寄稿してくださいました。
@NIFTYのバイオフォーラム(http://www.nifty.ne.jp/forum/fbio/)などでも活躍されている三品さんが、以前バイオフォーラムで書かれたHoustonについての発言に加筆修正をして、Houston研究留学ガイドとして寄稿してくださいました。
ヒューストンはシカゴに次いでアメリカ第4の都市です。日本ではナサの所在地としてその名を知る人は多いと思いますが、砂漠の中のロケットを打ち上げる町という誤ったイメージを持った人もまた多いことと思います。ヒューストンの正しいイメージは熱帯雨林に囲まれた緑豊かな町、オイルで急成長した成金の町、暑いか暑くないかの2シーズンしかない町、といったところでしょうか。ヒューストンやテキサス州についてよく偉大なる田舎という形容が用いられますが、全く的を得た表現だとつくづく思います。ちなみにロケットの打ち上げはフロリダです。
さて、気になる治安は、アメリカの大都市としては非常に良い方で、一日一人殺さている程度です。特に暑い間は殺人事件が多くなります。ヒューストンで医学生物学系の研究をしようとするほとんどの人はダウンタウンやや南に位置するテキサスメディカルセンター(後述)で仕事をすることになりますが、メディカルセンターで夜中まで実験するのはまあ大丈夫でしょう。メディカルセンターの内部は犯罪は非常に少ないといわれています(ないというわけではない)。建物の中はそれなりにセキュリティがしっかりしているので、車に乗るまでの間を注意すればなんとかなるでしょう。とはいえ、アメリカですからアメリカの常識に従って行動することは必要です。ヒューストンが他の町と異なるのは、その急すぎる成長のため危険な地域とそうでない地域が明確に分かれておらず、町中どこもそれなりに安全、どこもそれなりに危険という状況であるという事です。それでも、ここだけは絶対入っちゃダメという地域はありますので、着任早々に確認されることをおすすめします。
ヒューストンのダウンタウンの南10キロくらいのところに多数の研究所や病院が集まった地域があります。その数は50を越えると言われ、合わせて非営利団体テキサスメディカルセンター(TMC)というものを形作っています。TMC全体では職員数5万人、そのうち研究者は1万人といわれています。TMCの研究所としては、テキサス大学MDアンダーソンガンセンター(TMC最古、最大、最高の研究所)、テキサス大学医学部、テキサス大学歯学部、ベイラー医科大学、テキサス心臓研究所、ヒューストン大学薬学部、テキサス女子大学栄養学部などがあり、病院としてはそれぞれの研究所の付属病院に加え、セントルーク病院、メソジスト病院などの教会系の病院、ハーマン病院、ベントウブ病院などの公立病院があります。もともとは、綿花の売買で巨額の富をものしたMDアンダーソン氏が、その遺言で「人類の幸福のために」とだけ書き残してヒューストン市に全財産を寄付したところからTMCの歴史は始まります。それから約60年、熱帯多雨のジャングルの中に世界最大のメディカルコンプレックスが誕生するにいたったというわけです。すぐとなりにあるライス大学も含めてこれだけたくさんの研究所、研究者が歩いていける距離にいるというのは集積効果という観点からは計り知れないものがあります。
ヒューストンは住宅が供給過剰な町ですので、住むところは簡単に見つかると考えていただいてよいと思います。スーパーマーケットの入り口などに無料のアパートガイドというものがおいてあり、1000件近い物件の中から場所や値段、その他の特徴(門番がいるとか、プールがあるとか)などに応じて比較的簡単に候補を絞ることできます。ただ、ヒューストンは広い上に地下鉄などはいっさいないので、レンタカーを借りる、だれかに頼み込んで乗せてもらう、などの方法で交通手段を確保することが重要で、そうでなけ物件を見に行ったり、契約を結んだりするときにけっこう苦労をします。そこさえうまくクリアできれば最初の一週間のうちに住むところを決めることはわけないことだろうと思います。実際に物件を見てから、また、どういう地域が安全かという先住者の意見を聞いてから住む場所を決めた方がよいと思うので、日本にいる内から住む場所を決めるのはおすすめではありません。で、こちらのアパートは町の1ブロック全体を占め、全部で1000世帯もあるような巨大なものが多いので、大家さんとの個人的な交渉なんてのはありません。家を買うのならそういうことも必要ですが。条件を聞いて、気に入らなければ次に行けばよいだけです。設備に関してはプールだのサウナだのいろいろついていますが、一番大事なのはセキュリティです。やはり塀で囲んであるアパートの方が良いと思います。ゲートは当然住人しか通れないようなかたちになっているわけですが、ゲートに門番がいるかどうか、アパート内の見回りをやっているのかどうか、なども選択の基準になると思います。こういうことはアパートメントガイドに全て書いてあります。
ヒューストンの町のつくりは東京に割合似ていて、山手線の代わりにループと呼ばれる環状自動車道路があります。ダウンタウンが丸の内とするとメディカルセンターは芝公園に当たります。商社などの日本人駐在員は荻窪に当たる付近に固まって住んでいますが、メディカルセンターで働く日本人は六本木、渋谷、五反田あたりに住んでいる人がほとんどです。ただ、このあたりは家賃が高いので少し離れた新宿、田園調布といったあたりに住む人もいます。うちは善福寺公園に相当する場所にいました。また、UTハウジングとよばれるテキサスメディカルセンターの学生、ポスドクのための宿舎が高輪付近にあります。渡航先のボスに頼んでウェイティングリストに乗せてもらっておくとよいかもしれません。ホテルに関してはメディカルセンター内にヒルトン、ホリディイン、ハーベイスイート、マリオットなどがあります。いずれも日本から予約できるはずですが、これよりも安価なテキサス女子大寮(Texas Women's University Residence Halls)、あるいはそのとなりのメディカルセンター全体の学生寮(Laurence H. Favrot Hall)を1、2週間予約しておくとよいと思います。これはボスを通じて予約できると思います。なお、アパートの値段ですが、メディカルセンター付近だと2ベッドルーム(ダイニング+リビング+ベッドルームx2)で600ドルくらいから、平均すると900ドルくらいでしょうか。高いところは1000ドルを越えます。
さて、住む場所ですが、子供が学齢期かどうかによってメディカルセンターの近くにすむか、もっと西側のメモリアル地区に住むかが決まってきます。メモリアル地区には商社系日本人が多く住んでいて、日本語補習校、日本語塾などの教育機関があり、また商工会議所の作った小さな日本語図書室などがあったりします。メディカルセンターまでは車で40分から1時間です。で、具体的な住むエリアですが、子供の年令によって次の3つが考えられます。
(1)子供が5才以下、どこでもいい。ただしダウンタウンとループと呼ばれる環状道路の南側は止めた方がいい。メディカルセンター付近ではアストロドームの近くのアパートなどが日本人に人気あり。
(2)子供が小学生。メディカルセンターの近くで、学区の関係上、オールドスパニッシュトレイルという道より北側(アストロドームは南側になる)。これ以外の場所で公立の学校に子供をやると、撃ち殺されたり(子供同士のけんかで)、ヤク中になったり、というのが冗談ではなくなる。
(3)子供が中学生。(2)の学区も中学校はヤク中やらレイプやら発砲やらあるので、もう西側のメモリアル地区に住むしかない。家賃はかえって安い。でも最近はメモリアルの中学校でもヤクの手入れがあったそうです。
テキサスでは5才になるとプレスクールといって小学校のような義務教育の学校に通うことになります。したがって、子供は最低限アルファベットと、バスルームプリーズなどのサバイバルフレーズを覚えておく必要があります。6才からは月曜から金曜は現地校、そして土曜日には日本語補習校に通うというパターンになります。補習校には数年前から幼稚園年長組が設置されました。子供が小学生でも、人数が多かったり、またその他の生活パターンによってはメモリアル地区の方がいいかも知れません。これはこちらに何年いるつもりなのか、日本に帰るつもりがあるのか、といったことにもよるでしょう。子供を補習校や塾や習い事に通わせるのであれば、メモリアル地区の方がこれらの場所に近くて奥さんの負担が軽くなる、ということはあるでしょう。テキサスでは12才までの子供は子供だけでは外出できませんので、送り迎えはすべて親が行うことになるからです。
なお、最近はヒューストンでもますますドーナツ化がすすみ、メモリアル地区も必ずしもベストの場所ではなくなってしまったようです。妙に家賃が安い、学校の人種配分が極端である、というようなところはメモリアル地区でも要注意です。さらにその西のケイティ(Katy)に人々は移りつつあります。おかげで西側のハイウェイ(10号線)の渋滞は年々激しくなってきています。
車は必須です。そして国際免許は30日しか有効ではありません。また保険などの関係から、テキサスの自動車免許は速やかに取得されることをおすすめします。運転はもし日本で経験があるのならこちらでは全く問題ありません。車は、良い車も悪い車も安いもの高いのも、かっこいいのもださいのも含めて毎週数百台が売りに出ていますから、今から心配することはありません。実際に自分で乗って見ないことには決められないと思います。そしてアメリカは値段と性能が比例していると考えてよいところですから、高いものをかっておけばまあ大丈夫でしょう。
ヒューストンの相場では、1000ドルあれば車の形がしているものが買えて、3000ドルあればまともに動く車が買えて、5000ドルあれば安心して乗れる車が買えます。安いものはそれだけ修理に金がかかると考えた方がよく、結局総計5000ドルくらいは見ておいた方がよいでしょう。車はそれなりに金をかけて維持しないとどんどん垢がたまっていくものです。ところが大抵のオーナーはまだ走るからといってそれをしません。そして乗り手が変わったときに一気に不調が表面化するというケースが非常に多いのです。結論から言えば、安心して乗れる車は新車も含めてアメリカには存在しません。自分でケアして安心できるレベルに持っていくのです。もっともこういう考え方は車だけでなく、生活全ての基本となっています。
そのほか、免許の取得、保険の購入、プレートライセンス(日本でいう自動車税みたいなもの)、タイトル(所有権利書)、車検など車の購入に関してはいくつか人でないとできない手続きがありますので、こちらにくるまでは考える必要はないでしょう。(これら手続きには現住所も必要です。)
月曜に運転免許をとりにいって、一発で受かれば(たぶん実技は翌日以降でないと受験できないので)火曜に保険を買ってその日から自分の車を運転できます。レンタカーを借りる場合は、その車で運転免許を受験することが出来るかどうかを必ず確認してください。できない場合のことの方が多いのです。(レンタカーでの受験を認めないというのではなく、レンタカーが受験に必要な用件を満たしていないことがあると言う意味です。ようするにちゃんと保険がかかっているかどうかということなのですが)テキサスの運転免許は英語、スペイン語、中国語から好きなものを選んで受けることが出来ます。
「ヒューストン・ダラスに暮らす」という日本商工会議所発行の本があります。具体的な生活情報が載っていますので一読されることをおすすめします。たとえば運転免許の取り方とか(州によってかなり違います)、車の保険の種類とか、日本語の通じる医者はどこにいるか、とか。こういうものを見て耳年増になっておくのもよいかもしれません。車に関して言えば、日本語の通じる修理工場と仲良くなっておくとよいと思います。なんせ、車が故障すれば陸の孤島状態に直結しますので(変な場所や変な時間に故障すれば自分の寿命にも直結する)、日系修理工場のメリットは多々あると思います。日本語で、というメリットの他に、アメリカの一般の工場はこちらの頼んだ所しかチェックしないし、こちらの指示したところしか直してくれない(直っていないことも多い)のに対し、いろいろと予防的チェックをしてくれるからです。まあ、言われるままに修理整備していくと財布が持ちませんが、安全な生活という観点からは利用価値のある戦略だと思います。特に僕の使っていた工場は車を修理している間は無料で代車を出してくれたので、それだけでも大助かりでした。
ヒューストンには2000人程、メディカルセンターにはそのうちの50人ほどがいるそうです。が、外で日本語を聞く機会はほとんどないですね、だって全米4位の大都市ですからここは。といっても町の構造は田舎そのものですが。ヒューストンには大きく分けて5種類の日本人がいると思います。以下にざっとその内訳を。
1)メディカルセンター系日本人:低所得で長時間、熟練労働に従事しているのが特徴。移動とプロモーションのアメリカ社会にあっては、ポスドク終了後、同じ研究室の同じポジションに戻る日本人は世界の7不思議の一つである。このカテゴリーはさらに、狂ったようにZZをするPhD系と狂ったようにYYをするMD系のサブグループに分けられるようであるが、これは当事者の個人的状況にも大きく依存し、単純に学位だけでは判断できないようである。推定個体数約100(家族も含めて、以下同様)。
2)商社系日本人:商社、銀行などのビジネスマン。ほぼ全てがヒューストン西の郊外、通称メモリアルエリアと呼ばれる地域に生息する。会社からの住居手当のため、日本では信じられないような豪邸に住んでいるのが特徴。乗っている車も1)のカテゴリーの日本人に比べると数クラス上である。しかしながら、住居の広さにかまけて買い込んだ家具を帰国時になって悔恨のまなざしで見つめる姿が散見されたり、庭の水撒きをさぼって芝生をからして大家に訴えられるなど、豪邸ならではの苦労も絶えないようである(ほとんどやっかみかな)。また、1)に比べて年齢の高い学童期の子供が居る場合が多く、どういう教育を施すかが親の悩みでもあり、また楽しみでもある。推定個体数約1500。なお、最近の日本の不景気により多くの日系企業の事務所が閉鎖、個体数の低下、さらには絶滅が懸念されている。
3)留学生系日本人:ライス大学、ヒューストン大学、セントトーマス大学などの学部、大学院、もしくはそれらの語学学校に通うF1ビザホルダー(現在テキサス大学ヒューストン分校には日本人大学院生はいない。日系人はいるが。ベイラーの大学院には2人ニフティの会員が。。。ここ読んでるかな??)。理論的には1)のカテゴリーに比べて貧乏であるべきなのだが、実家からの仕送りでいい暮らしをしている場合も多い。もっとも地方から東京の大学にやることを考えればアメリカに留学させた方が親の出費は少ないかも知れない。なんたってものが安いから、ここは。語学のハンデの克服にはそれぞれ多大な努力をしているようであるが、個人主義のこの国では本人がよほどしっかりしていないとあっと言う間に落ちこぼれてしまう危険がいっぱい。所定の単位を修得できないとビザの更新が出来ないから、ポスドクに比べて命がけである。推定個体数約100。
4)主婦系日本人:アメリカ人と結婚し、ヒューストンに住む日本人。Kビザ(だったかな)、グリーンカード、もしくはUSシチズンシップを持つ。幸せな生活を送っている人もいれば、だんなにabuseされて離婚寸前の人もいる。2)のカテゴリーの日本人の子供が通うヒューストン日本人補習校の国語の教師の大半はこのカテゴリーの日本人である。中には家庭では全く日本語を使っておらず、補習校でのみ日本語をしゃべる人もいるとか。関係ない話であるが、1984年に筆者が渡米したときに飛行機でとなりにすわったおばさんもGHQの時代にアメリカ兵と結婚してヒューストンに住んでいるという人であった。推定個体数約100。主夫系日本人の実態は明かではない。(2人ほど知っているが、苦労はあるようだ。やはり日本人女性は偉大であるということにしておこう。)
5)商売人系日本人:日本人相手の、あるいは日本の特色を出したサービス業に従事する。日本食レストラン、日本食材店、旅行会社、車の販売修理、引っ越し宅配業、さらには受験産業など。日本と同じようなきめ細かいサービスを受けることが出来るが、メジャーなカテゴリー2)の日本人に対して価格が設定されていることが多く、割高になる場合があるので利用時には比較検討が必要である。生活実態については明かでない部分が多いが(単に僕が個人的つきあいがないだけです、はい)、仕事の性質上個人経営が多いので、独立したばかりのアシスタントプロフェッサーのようなプレッシャーを感じることも多いのではないかと推察される。推定個体数約200。なお、最近の日本の不景気により、接待費を当て込んで価格設定をしている飲食店は本気で絶滅の危機に瀕している。おいしいもののためならいくら使ってもいいという人は急ぎましょう。まあ、安くておいしい店もたくさんあるけど。
他にも日系の方もずいぶんおられるようです。Mykawa、Satsumaなどという名前の道もありますし(マイカワという道には先達の悲しい話が伝承されています)、ヒューストンで一番古い東京ガーデンという日本食レストランは日系の方が経営されています(発音が全くネーティブだった)。あ、そうそう、この東京ガーデンは日本舞踊を見せてくれる店でしたが、使命を果たした、と宣言して3年ほど前に閉店してしまいました。店長、使命って??
http://www.tmc.edu/
TMCのホームページ。institution をクリックすれば、TMC内のいろいろな研究所、病院のサイトへ飛ぶことができる。
http://www.bcm.tmc.edu/
ベイラーのサイト。
http://www.mdanderson.org/
テキサス大学アンダーソンガンセンターのサイト。なぜかorgドメイン。
三品さんはすでにHoustonを離れてらっしゃいますが、e-mailアドレスを公開されていますので、現地情報などが必要な方は直接e-mailして下さい。
●2000年6月20日:新規掲載
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