2017.05.09

僕の新作「なぜパターン認識だけで腎病理は読めないのか?」まもなく発売になります

この半年間で筑波の長田先生と2人で書き上げた腎病理のテキストブックが、いよいよ発売になります。正式発売日は5月20日。月末の日本腎臓学会では、どかんと平積みして売ります。腎臓病を勉強したい人はマストバイの一冊であると言い切れます。タイトルも「なぜパターン認識だけで腎病理は読めないのか?」と、かなりとがったタイトルにしました。

どんな本か理解していただくために、僕が書いた「あとがき」をこちらに、転載しますので、お読み下さい。

*****
「なぜパターン認識だけで腎病理は読めないのか?」のあとがき

これまで、腎病理を勉強しようと思ったことは、何度もあった。東京医学社の「腎生検病理アトラス」も読んだし、いくつかの英語で書かれた腎病理の教科書も読んだ。だから、こんな病気が、こんな病理像を呈するというのはある程度理解している。つもりだ。でも、実際の腎生検サンプルを顕微鏡で見て、診断書を書くことは僕にはできない。僕は、尿細管の研究者としてそれなりのキャリアを積んで、免疫組織だとかは、いっぱいやってきたから、読めたっておかしくないはずなんだけど、読めない。結局は、数年、腎病理の先生の元で修行をしないと腎病理の診断書は書けないものだと思っていた。

長田先生と仲良くなったのは、2年前くらいだった。腎病理の本を書きたいのだけれど、出版社はどこかいいかとか、そういうことを聞かれた。僕は、これまで何冊か単著の本を出していたし、医学出版社にはたくさんの知り合いがいたので、いくつかアドバイスをした。でも、長田先生が腎病理の本を出すところまでには至らなかったようである。

僕は、自分が勉強するときには、無理矢理、人に教えるということをしている。「自分の知っていることを教えるより、自分が知らないことを教える」ということをモットーにしている。いやがる学生をつかまえて教えることもあれば、本を書くこともある。でも、さすがに、腎病理に関しては、自分で本を書くというのは難しいので、どうしたものかと思っていた。そんな時、長田先生から、再度相談があった。

そうだ、長田先生との対談という形の本を書いてしまおう

と思ったのだ。僕が、長田先生に教えを乞うという形で、しかも、対談という形をとることで、新しい形のアイデアが実現できることになった。

この本は、二人の共著という形になっているけど、基本的には、長田先生の本である。でも、腎病理学者である長田先生が無意識におこなっている腎病理読影のプロセスを、ロジックとして言語化することに、僕はそれなりの役目を果たせたのではないかと思う。

もちろん対談本を書いたのは初めての経験だったが、2つの意味で刺激的だった。一つは、この本を作り上げる過程で、腎病理を学ぶことができたこと。実際に腎病理の診断書を書くには、それなりにトレーニングしなければならないだろうけど、診断書を読み解く力は、随分ついたんじゃないかと思っている。もう一つは、本を書くことが好きな人間にとって、こういう、ちょっと変わったプロセスで本を書き上げられたことがとても刺激的だった。

この本が出版される前に、何人かに原稿を読んでもらったんだけど、みんなから、「どうやって、この本を書いたんですか」と、聞かれた。この対談本がどのように作られたか、少しだけ、タネ明かしをしておこう。当初は、2人で本当に対談して、それをライターさんに書き起こしてもらうという案もあったけど、それはボツになった。数時間の対談でまとめられるほど、2人の考えも構造化はできていなかったから。やはり、数ヶ月かけて、お互いがキャッチボールをしながら、書くことになった。長田先生は筑波、僕は東京で、そんなに頻繁に会えるわけではない。そこで、Dropboxを使って、リモートで原稿を作り上げていくというプロセスをとることになった。ただ、実際に、ゼロの状態から、いきなり本を書くことは難しく、何回か僕のオフィスに、長田先生に来てもらって、原稿の方向性というかストーリーを決め、そこから、ディテールを書き進めるような形で原稿を書いていった。なかなか合う時間が取れないので、シカゴのアメリカ腎臓学会に出張しているときに、長田先生が宿泊されているホテルの部屋で二人で話し合いながら書いたと言うこともあった。

対談形式は取っているけど、実際には相手のセリフを勝手に作り上げて、互いに書き進めていったので、後になって「僕は、こんなこと言いませんよ」と言って、書き直すみたいな、擬似的な対談で作り上げた。

本を書き始めるときに2つのことを決めた。一つは、多少、学問的に断定することが難しいことであっても、私たちの意見として、はっきりとしたメッセージを伝える、ということ。もう一つは、この本をはじめから、最後まで読んでもらうことで、実際に、腎病理が読めるようになることにこだわるということだった。

今までになかったような、腎病理の本ができあがったと思う。ただ、ほんとに、腎病理が読めるようになるには、この本を読んだ後、一定期間、トレーニングをしなければならないだろう。でも、この本が、そのトレーニング期間を随分短くしてくれるのではないかと思っている。

2017.05.06

本の紹介か「みみずくは黄昏に飛びたつ」

川上さんの、村上春樹作品の理解すごいっていうのが、印象的な一冊。

村上春樹自身は、そんなこと言ったかなぁとかいって、煙に巻いている感じ。

『騎士団長殺し』は、たぶん、あまり売れ行きがよくなくて、このあと、返本ラッシュになるんじゃないかと思う。僕は、とても楽しめたけど、マーケットと本の出来というのは、一致しないことも多いから。

このインタビュー本の第1章の「優れたパーカッショニストは、一番大事な音を叩かない」は、「MONKEY」で読んで、とても、興味深くて、こうして本に収載されたのはよかったと思います。このインタビューの直後から、『騎士団長殺し』の執筆に取りかかって、10ヶ月で第1稿を書き下ろしたそうです。

村上春樹によれば、『騎士団長殺し』を書き始める時にあったのは、騎士団長殺しというタイトルと、「二世の縁」と第1章の出だしの文章「その年の五月から翌年の初めにかけて、私は狭い谷間の入口近くの山の上に住んでいた。」の3つ要素だけだったそうです。

いまだに、原稿はEG-Wordを使って書いていいるらしく、どんだけ、編集者泣かせなんだろうとか思いますが、なかなか興味深い一冊でした。

みみずくは黄昏に飛びたつ
川上 未映子 村上 春樹
新潮社

2017.05.04

レーザーポインターが使えないときどうするか

プレゼンテーションの時にレーザーポインターが使えないケースって、意外とあります。

一番多いのが、レーザーポインターを持っていくのを忘れたとか、電池が切れたとかという場合。それ以外にも、会場に行ってみたら、スクリーンではなくて、巨大なモニターの映すような仕組みになっているというのもよくありますね。あと、遠隔中継、二画面表示、e-learning教材の時にも使えませんね。

そんな場合の解決先をいくつか紹介します。一応、Mac使いの人を対象に書いていますが、Windowsの方にも応用が利きます。

解決策1:

指で指す。原始的ですが、分かりやすいです。指で指すの応用で、指示棒を使うという方法もあります。これ、意外と好評です。アマゾンを見ると、いろんな指示棒が売っています。ただし、中継の時とか、e-learning教材の時には使えませんね。

解決策2:

コクヨのエアビームとか、LogicoolのSPOTLIGHTとかを使う。これは、ソフトウェア的にポインターを画面上に表示するタイプのポインターを使います。すべての問題を解決してくれますが、実際使ってみるとわかりますが、ポインターの指す方角をジャイロや加速度センサーで認識する仕組みなので、大まかにポイントするには問題ないのですが、細かい部分をポイントするとなると、意外と難しいです。

コクヨ PCプレゼンポインター エアビーム パワーポイント操作付 ELA-P1
コクヨ(KOKUYO) (2011-09-09)
売り上げランキング: 8,598
解決策3:

マウスの矢印を表示させて、ポインター代わりにする。これが、なんにもいらなくて、便利な気がします。ただし、マウスをいじることになるので、演者がコンピュータの前に張り付くことになりますが。PowerPointの場合は、マウスを触ると矢印が出てきますが、右クリックメニュー(Macだとcontrol + クリック)で、矢印を常に出すようにすることもできます。ペンで書き込んだりもできます。Keynoteの場合は、プレゼンテーション中にcをおすと、矢印が出てきます。

なお、通常のマウスの矢印は、小さくて見づらいので、以下の方法で大きくしておくといいです。「システム環境設定」の「アクセシビリティ」で設定します。「ディスプレイ」をクリックし、「カーソルのサイズ」スライダを右にドラッグすると、サイズを大きくできます。

解決策4:

KeynoteのiOSアプリはコンピュータ側のKeynoteのリモコンとして使うことができます。iPhone上でポインターが動かせます。下の写真のような画面で操作します。ペンで書き込むこともできます。プレゼンテーションの時に、これを使うと、たいてい、びっくりされますね。ただし、bluetoothやWifiで接続するので、時々、接続が悪くて、モタモタすることがあります。

解決策5:

レーザーポインターを使わないスライドを作る。以前、うちの大学のプレゼンが上手な先生が、やっていました。アニメーションで聴衆が見るべき場所をうまく誘導されていました。僕も、なるべくレーザーポインターは使わないようにしていますが、ここまで作り込むことはしていません。

アーカイブ

過去ログ一覧