3. 感染症のマネジメント 臓器別各論

3. 1. 1.  急性咽頭炎

ポイント:

  1. ウィルス感染が最多(40%近く)
  2. A群β溶連菌 15-30%(成人はもっと低い)
  3. その他の病原体⇒ いずれも1%未満
  4. A群β溶連菌を鑑別して治療するのがポイント!
    1)発熱あり、2)圧痛伴う前頚部リンパ節腫脹あり、3)扁桃の白苔や浸出液があり、4)咳がない場合、溶連菌感染の可能性は極めて高い(75%程度)
  5. A群β溶連菌は迅速テストがある⇒ 陽性であれば診断がつく(感度は80-90%)
  6. 鑑別つけにくい・迅速検査が使えない時は咽頭培養を提出(感度は90%以上)⇒ A群β溶連菌陽性であれば治療する。治療開始は培養結果判明後でよい。
  7. それ以外は原則として対症療法でフォロー可能⇒ 「とりあえず」抗菌薬を出すという態度は間違い!
  8. 扁桃周囲膿瘍などの合併症があれば抗菌薬治療の適応!⇒ 次項を参照する

その他:
かぜ症候群だと思ったら⇒ 原則は対症療法! 「とりえあず抗菌薬」は間違い

起因菌

治療

呼吸器ウィルス: 最多(40%近く)
A群β溶連菌:15-30%(成人はもっと低い)
その他の病原体⇒ いずれも1%未満

その他比較的頻度の低い微生物:
 HSV, CMV, EBV, HIV
 Group C, G streptococcus
 Neisseria
 Mycoplasma
 Chlamydia pneumoniae

A群β溶連菌感染の場合
Phenethicillin 1回 80万単位 1日4回 1内服 10日間

ペニシリンアレルギーの場合、代替として:
(1)Clarithromycin
1回 200mg 1日2回内服 10日間
(2)Clindamycin
1回150mg 1日4回内服 10日間
(上記(1)、(2)には耐性がある場合あり⇒自施設・地域での感受性パターンに留意する)

参考 IDSA Gudeline Clin Infect Dis 1997;25:574

風邪症候群に抗菌薬は意味はあるの?

3. 1. 2. 扁桃周囲炎(peritonsillitis)・扁桃周囲膿瘍(peritonsillar abscess)・咽頭周囲感染(parapharyngeal space infection)

ポイント:

  1. 主にA群β-溶連菌と口腔内嫌気性菌の感染(A群β-溶連菌感染が先行して、Fusobacteriumなどの嫌気性菌による続発性の感染が起る)
  2. 頭部・口腔内診察が重要⇒ 開口障害・口蓋垂の偏位・口蓋扁桃周囲部分の著明な張り出しがあれば、本疾患を疑う
  3. 治療開始前に必ず血液培養を2セット採取する⇒ 頚静脈の敗血症性血栓性静脈炎をきたす場合もある
  4. 強力な抗菌薬治療に加え、膿瘍の外科的ドレナージが効果的⇒ 耳鼻科・頭頚科の医師にはやめに連絡を取って対応を協議する

起因菌

初期治療

Streptococcus group A
Peptostreptococcus
Fusobacterium
Bacteroides

ドレナージを考慮
抗菌薬:
Ampicillin/sulbactam 1回1.5 g 6時間毎
Penicillin G+clindamycin

感染診療の手引き ©2006 Norio Ohmagari.