3. 6. 腹腔内感染症の初期治療

3. 6. 1. 急性胆嚢炎

ポイント:

  1. もとは胆石のImpactionなどの機械的閉塞⇒ 胆嚢の炎症が起こり、これが50%以上の例で2次的に感染するために起こる(全例が感染するわけではない)
  2. ビリルビンの上昇は50%程度に起こるが、ごく軽度
  3. ドレナージもしくは手術が最も重要
  4. 治療開始前に血液培養を2セット必ず採取

ガイドラインにみる急性胆嚢炎の診断基準

A 右季肋部痛(心窩部痛)、圧痛、筋性防御、Murphy sign
B 発熱、白血球数またはCRPの上昇
C 急性胆嚢炎の特徴的画像検査所見

疑診: AのいずれかならびにBのいずれかを認めるもの
確診: 上記疑診に加え、Cを確認したもの

出典:急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン(急性胆道炎の診療ガイドライン作成出版委員会編)

起因菌

初期治療

E.coli
Klebsiella
Proteus
(Enterobacter)
(Enterococcus)

嫌気性菌群⇒ 稀
Bacteroides
Clostridium
Fusobacterium
(嫌気性菌が検出されるのは、過去に胆管系手術などを受けている場合が多い)

Ampicillin/sulbactam 1回 1.5 g 6時間毎静注
Cefmetazole 1回1g 6-8時間毎静注

3. 6. 2. 市中発症急性胆管炎

ポイント:
(1) 胆道閉塞が起こり、内壁が壊死⇒ 細菌が増殖して感染を起こす
(2) 約半数のケースで敗血症が起こる
(3) ドレナージが最優先である

  • Systemic Inflammatory Response Syndrome (SIRS)来たすことが多く、全身管理が重要である
  • 治療開始前に血液培養を2セット必ず採取

ガイドラインにみる急性胆管炎の診断基準

A 
1. 発熱
2. 腹痛(右季肋部または上腹部)
3. 黄疸

B
4.  ALP、γ-GTPの上昇
5.  白血球数、CRPの上昇
6.  画像所見(胆管拡張、狭窄、結石)

疑診: Aのいずれか+Bの2項目を満たすもの
確診: (1)Aの全てを満たすもの(Charcot3徴)
    (2)Aのいずれか+Bの全てを満たすもの

出典:急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン(急性胆道炎の診療ガイドライン作成出版委員会編)

起因菌

初期治療

E.coli
Klebsiella
Proteus
(Enterobacter)
(Enterococcus)
Bacteroides
Clostridium

比較的軽症―中等度
Ampicillin/sulbactam 1回 1.5 g 6時間毎静注
Cefmetazole 1回 1g 6-8時間毎静注

中等症以上 血行動態不安定例)
⇒これは「待てない」状態であり、早期からEnterobacterをはじめとした耐性傾向の強いグラム陰性桿菌、嫌気性菌のカバーをしておく。培養結果が得られたら適宜 抗菌薬の最適化・De-escalationを行う
Cefotaxime 1回 1g 6-8時間毎静注+Clindamycin 1回600mg8時間毎静注
Ceftriaxone 1回 1g 12時間毎静注+Clindamycin  1回600mg8時間毎静注

3. 6. 3. 胆道感染症: 院内発症・医療機関への暴露が濃厚・胆道系のデバイスが存在する場合

ポイント:
(1) 胆道閉塞が起こり、内壁が壊死⇒ 細菌が増殖して感染を起こす
(Mandell P845 Figure 64-6 参照)
(2) 約半数のケースで敗血症が起こる
(3) 手術操作やステント・ドレーンなどの異物が入っている場合が多く、P. aeruginosaなどの院内環境菌が関与していることが多い
(4) よって市中発症の場合よりも広域スペクトラムの抗菌薬を初期治療に使用する必要がある
(5) ドレナージが最優先である
(6) SIRS来たすことが多く、全身管理が重要である
(7) 治療開始前に血液培養を2セット必ず採取

ガイドラインにみる急性胆管炎の診断基準

A 
1. 発熱
2. 腹痛(右季肋部または上腹部)
3. 黄疸

B
4.  ALP、γ-GTPの上昇
5.  白血球数、CRPの上昇
6.  画像所見(胆管拡張、狭窄、結石)

疑診: Aのいずれか+Bの2項目を満たすもの
確診: (1)Aの全てを満たすもの(Charcot3徴)
    (2)Aのいずれか+Bの全てを満たすもの

出典:急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン(急性胆道炎の診療ガイドライン作成出版委員会編)

起因菌

初期治療

E.coli
Klebsiella
Proteus

P. aeruginosa
Acinetobacter baumanii
Serratia marcescens
Citrobacrer
Enterobacter

(Enterococcus)

Bacteroides
Clostridium

緑膿菌をはじめとした耐性傾向の強いグラム陰性桿菌、嫌気性菌のカバーも必要となる
Piperacillin/tazabactam 1回2.5g 6時間毎静注

Cefepime 1回1g 12時間毎静注+ Clindamycin 1回600mg 8時間毎静注

Cefoperazone/ sulbactam 1回2g 12時間毎静注

感染診療の手引き ©2006 Norio Ohmagari.