3. 5. 血流・血管内感染症の初期治療

3. 5. 1. 感染性心内膜炎

ポイント:

  1. 心内膜炎を疑ったら、必ず場所を変えて3セット以上血液培養を採取する⇒ 可能な限り時間をずらして採取することが好ましい(持続性菌血症を証明するため)
  2. 経胸壁心エコー⇒ 経食道エコーにて、Vegitationの有無を確認すること
  3. 心不全兆候(弁の破壊による)、不整脈(A-V node部位への膿瘍形成など)、局所の疼痛(腰背部痛)や、中枢神経症状(脳膿瘍、Mycotic aneurysmによるSAH)などの出現に十分に注意する

起因菌

初期治療

Subacute(亜急性)
Streptococcus viridans(30-40%)
Other strep(15-25%)
Enterococcus faecalis(5−18%)
Staphylococcus(20-35%)

稀な原因:
グラム陰性桿菌(HACEK Group等)(2−3%)
Candidaなど(1−2%)

Viridans Streptococcus
注意:MIC高い場合があるので、必ずMICを測定して結果を治療に反映させる
Penicillin G(3million Units 4時間毎静注、18million/day)±Gentamaicin 1mg/kg 8時間毎(初期2weeks)

Enterococcus
Ampicillin(2g 4時間毎)+ Gentamicin 1mg/kg 8時間毎
Penicillin(3million Units 4時間毎静注、18million/day)+ Gentamaicin(1mg/kg 8時間毎)

グラム陰性桿菌 HACEKなど
→Ceftriaxone 2.0g  12時間毎

Acute(急性)
Staphylococcus aureus(MSSA、MRSA)
Streptococcus pneumoniae
β−Streptococcus group A

MSSA
Cefazolin(2.0g 8時間毎 4-6週間)+Gentamaicin(1mg/kg 8時間毎、3-5日間)

MRSA
Vancomycin (15mg/kg 12時間毎で治療を開始し、トラフ濃度15を目標にTDMを用いながら調整する)+rifampicin±Gentamicin(Genta使用すると血液培養の陰性化が早い)

Streptococcus
上記Viridans streptococcusを参照

3. 5. 2. 血管内カテーテル感染症

ポイント:

  1. カテーテル挿入部とその付近に感染兆候ある場合、もしくは血管内カテーテルを有する患者に発熱などの感染兆候があるものの、フォーカスがはっきりしない場合には、カテーテル感染を疑う(重要)
  2. 必ず血液培養を場所を変えて2セット採取する(少なくとも1セットを末梢で⇒カテーテル血・末梢血両方あると有用)
  3. 感染を強く疑う場合は、カテーテルは抜き去る
  4. 血流感染が疑わしければ、必ず抗菌薬を投与する(重症化しうるため)
  5. カテーテル感染による血流感染は「全て」治療の適応である⇒ 抗菌薬治療を怠ると、感染性心内膜炎・膿瘍・骨髄炎・眼内炎などの極めて重篤な合併症を起こすこと有り!
  6. 起因菌が判明したら抗菌薬のDe-escalationを積極的に行う。すなわちBroad spectrum からNarrow spectrumの薬剤へ変更を行う。
  7. またカテーテル感染の場合は基本的にカテーテルを抜去する
    (血栓症等の合併症のないコアグラーゼ陰性ブドウ球菌感染の場合など、ごくわずかの例外はある)

起因菌

初期治療

MRSA
MRSE
Enterococcus

E.coli
Klebsiella
Enterobacter
Pseudomonous aeruginosa

Candida (IVHで多い)

患者の状態が敗血症的であってカテーテル感染が疑われる場合、起因菌判明まで、

Vancomycin 1回15mg/kg(患者のActual body weightを利用) 12時間毎静注  + 
Tobramycin 1回 5mg/kg(患者のIdeal body weight使用)24時間毎(もしくはTobramycinに換えてCefepime OR Ceftazidime1g 8時間毎)

(特別な場合)
血液培養で酵母が陽性⇒ 通常はCandida
1st choice:  Micafungin 1回 150mg 24時間毎静注
Alternative: Amphotericin B 1回 0.3-1.0mg/kg 24時間毎静注(C. glabtara, C. krusei等の検出頻度が高い施設では高めのドーズを選択)
Fluconazole:自身の所属する施設においてFluconazole低感受性のCandidaの検出率が低い場合には、初期治療としてFosfluconazoleFluconazoleの使用が可能である。

感染診療の手引き ©2006 Norio Ohmagari.