3. 3. 尿路感染症の初期治療

3. 3. 1. 市中発症の腎盂腎炎

市中発症⇒ 起因菌は9割近くがE. coli

ポイント:
原則として、治療開始前に尿検体を得る
加えて、血液培養も治療開始前に必ず2セット採取!

  1. まずは尿沈渣を行う
    WBC>10/HPFであれば尿路感染を強く疑い、尿の微生物学的検査へ進む
    症状無く、膿尿がなくても尿培養陽性⇒ 無症候性細菌尿はわずかな例外を除き治療不要!!
  2. 次に尿のグラム染色を行う
    グラム陰性桿菌(GNR)⇒ E. coli, Klebsiellaなど疑われる
    グラム陽性球菌(GPC)⇒ Enterococcus疑われる⇒ Ampicillin使用を考慮する
  3. 治療開始前に尿を必ず培養に提出すること
  4. 培養結果を得たうえで、必要に応じて抗菌薬の変更をおこなう(最適化もしくはDe-escalation)

起因菌

初期治療

E.coli
Klebsiella
Proteus mirabillis

1)Gentamicin 1回5mg/kg 24時間毎静注
2)Cefazolin  1回 1g 8時間毎静注

グラム染色で腸球菌感染疑い(実際の頻度は少ない):
3)Ampicillin 1回1g 6時間毎静注

3. 3. 2. 複雑性尿路感染症

⇒ 尿道カテーテル関連、尿路閉塞、膀胱尿管逆流、残尿、尿管ステント留置中、腎ろう設置中など
⇒ 緑膿菌などの院内感染菌の頻度が高くなる!

ポイント:
原則として、治療開始前に尿検体を得る
加えて、血液培養も治療開始前に必ず2セット採取!

  1. まずは尿沈渣を行う
    WBC>10/HPFであれば尿路感染を強く疑う
    症状無く、膿尿がなくても尿培養陽性⇒ 無症候性細菌尿はわずかな例外を除き治療不要!!
  2. 次に尿のグラム染色を行う
    グラム陰性桿菌⇒ E. coli, Klebsiella, P. aeruginosaなど疑われる
    グラム陽性球菌⇒ Enterococcus疑われる⇒ Ampicillin使用を考慮する
  3. 治療開始前に尿を必ず培養に提出すること
    抗菌薬耐性菌を見落とさないために、必ず行う
  4. 起因菌が判明したら抗菌薬のDe-escalationを積極的に行う。すなわちBroad spectrum からNarrow spectrumの薬剤へ変更を行う。

起因菌

初期治療

E.coli
Klebsiella
Proteus vulgaris
Enterobacter
Serratia
Pseudomonous aeruginosa

Enterococcus

MRSA(まれに)

(1) 尿のグラム染色でGNRのみ陽性のとき
Cefepime 1回1g 12時間毎静注(重症時にGentamicin 1回5mg/kg 24時間毎静注併用)
⇒ 感受性があれば積極的にDe-escalationを行う

(2) 尿のグラム染色でGPC陽性のときEnterococcusが疑われる
Ampicillin 1回1g 6時間毎静注±Gentamicin 1回1mg/kg 8時間毎静注(血液培養陽性化するような重症例では併用

(3) 尿のグラム染色でGPCとGNR
両方陽性のとき
複雑性尿路感染で、腸球菌に加えて緑膿菌などのグラム陰性桿菌の混合感染が疑われる
Piperacillin 1回2g 6時間毎静注+Gentamicin 1回5mg/kg 24時間毎静注

感染診療の手引き ©2006 Norio Ohmagari.