3. 4. 中枢神経感染症の初期治療

3. 4. 1.  院外発症の急性細菌性髄膜炎(成人)

ポイント:以下は非常に重要!

  1. 病歴診察で髄膜炎を疑ったら、30分以内に検査を済ませて治療を開始する!
  2. 治療開始前に必ず血液培養を、場所を変えて2セット採取
  3. 頭蓋内圧亢進が疑われる場合には、腰椎穿刺を行う前に頭部CTを撮影する
  4. 腰椎穿刺による髄液の採取を行い、培養および一般検査に提出する
  5. 治療開始は髄液採取後が理想的であるが、髄液採取・CTなどで時間がかかる場合は血液培養を採取したらすぐに抗菌薬を投与する(抗菌薬投与後に髄液中の菌が消失しはじめるのには数時間かかる)

髄液所見: 細胞数↑ PMN>Mo、glucose↓、Protein ↑
(PMN:多核白血球、Mo:単核球)

起因菌

初期治療

頻度が多いもの:
Streptococcus pnemoniae
H.influenzae
Listeria monocytogenes(高齢者、乳児、免疫不全者)

以下は稀だが起こりうる:
Neisseria meningitidis(日本での報告は少ないが、重症化するので注意)
Staphylococcus aureus(敗血症に併発)
E.coli ・Group B streptococcus(新生児に多い)

細菌性髄膜炎に伴う合併症のリスクを最小限にするために:
⇒ 抗菌薬の開始前、もしくは開始と同時にDexamethasone 1回 10 mg  6時間毎に経口もしくは静注射で合計4 日間投与

抗菌薬としては:
Ceftriaxone1回2g 12時間毎静注+Vancomycin 1回 750mg 8時間毎 静注
(注意: 日本国内ではペニシリン低感受性肺炎球菌の分離頻度が高くなっており、初期治療にはペニシリン低感受性肺炎球菌も標的に入る。よってバンコマイシンが初期治療に入る)

Listeriaのリスクあるときは上記に加え、Ampicillin(1回2g  4時間毎静注)を併用
注意: Listeria感染のリスクが高いのは年齢50歳以上および基礎疾患などで細胞性免疫不全を有する例である

3. 4. 2. 院内発症急性細菌性髄膜炎・脳室炎

ポイント⇒ 「院外発症の急性細菌性髄膜炎」に順ずる

  1. 病歴診察で髄膜炎を疑ったら、30分以内に検査を済ませて治療を開始する!
  2. 治療開始前に必ず血液培養を、場所を変えて2セット採取
  3. 頭蓋内圧亢進が疑われる場合には、腰椎穿刺を行う前に頭部CTを撮影する
  4. 腰椎穿刺による髄液の採取を行い、培養および一般検査に提出する
  5. 治療開始は髄液採取後が理想的であるが、髄液採取・CTなどで時間がかかる場合は血液培養を採取したらすぐに抗菌薬を投与する(抗菌薬投与後に髄液中の菌が消失しはじめるのには数時間かかる)

髄液所見: 細胞数↑ PMN>Mo、glucose↓、Protein ↑
(PMN:多核白血球、Mo:単核球)

起こりうる状況:

  1. 脳外科手術後、V-Pシャント手術後
  2. 敗血症(特にStaph.aureus)に続発
  3. 腰椎穿刺後

起因菌

初期治療

Klebsiella
Enterobacter
Serratia
Pseudomonous aeruginosa
Acinetobacter
MRSA
MRSE

起因菌判明まで
Vancomycin (1g 8時間毎)+Ceftazidime (2g 8時間毎) OR Cefepime 2g 8時間毎

特別な場合
MRSAの場合
VancomycinRF (またはST合剤)

MRSEの場合
VancomycinRFP

Pseudomonous aeruginosaの場合
Ceftazidime OR Cefepime
Tobramycin など

注意:
脳室炎の場合にはVancomycinやAminoglycosideの脳室内注入療法の併用を考慮する。

感染診療の手引き ©2006 Norio Ohmagari.