「科学者という仕事」

「科学者という仕事」

著者:酒井 邦嘉著、税込価格:¥819、出版:中央公論新社、ISBN:4121018435、発行年月:2006.4【bk1】【amazon.co.jp】【目次

hypoxia research:blogで激賞されていたので、買ってみました。 私は、正直言って、この手の本は苦手で、「科学者とは」と大上段に振りかぶられてしまうとダメなのです。でも、この本はそんなことを感じさせずに一気に読み通すことができました。アインシュタイン、朝永振一郎博士、キューリー夫人といった多くの著名な研究者の逸話を紹介し、彼らの研究にまつわる苦楽を知ることで、科学者として必要な素質についてくみ取って欲しいという構成のおかげでしょう。とにかく感心させられるのは、科学者のみならず、文筆家、奇術師などのものすごい量の名言を、紹介していることです。私が一つ、心を奪われた堀田先生の言葉を引用します。

研究者はみんな研究が好きで好奇心があり、そういう才能を持った人の集まりです。(中略)ところがしばらくは知ると、実は自分の才能のない部分がrare-limiting factorとなってきます。実験は大好きだが論文下記が下手な人などがその好例です。飛躍ばかりで論理的に進められない人、論理的だが飛躍のない人、PIになったのに下につく人との人間関係をうまく構築できない人、超有名なのに異性でしくじる人、などなどです。つまり人生のレースは才能で勝負しているように見えるが、じつは最後は才能のない部分をいかにカバーできるかが肝心です。つまり本当は「ない才能で勝負」するのです。まあ、これが人生の面白さとも言えるものではないでしょうか。

研究者を目指す方におすすめの一冊です。


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