2016.03.15

ORCID

3月15日に宮入暢子(ORCIDアジア・太平洋地区ディレクター)さんをお呼びして、ORCIDの話を伺いました。

学術情報の問題の一つに、「名寄せの問題」があります。私はかなり特殊な名前なので問題がなく、Pubmedで「t monkawa」検索すれば、私の論文リストを簡単に作ることができます。しかし、よくある名字の方の論文リストを作ろうと思ってもなかなか難しいです。中国や韓国の研究者は名字のバリエーションが少ないので、さらに難しいです。同姓同名の問題以外にも、所属機関の異動、結婚の際の改姓など、さまざまな理由で、論文リストの作成には困難があります。そこで、「マイナンバー」のように、研究者に固有のIDを付与する動きが高まっており、世界中の研究者に対して固有の識別子を与えることを目指して、ORCID(オーキッド)が2010年に立ち上がりました。ORCIDはOpen Researcher and Contributor Identifierの略です。

ORCID IDは16桁の数字で構成されたIDで、ORCIDのサイトhttp://orcid.orgで、研究者自身が申請して、ORCID IDを取得します。

ORCIDは急速に浸透しており、最近では、The Royal Societyが発行する各ジャーナル、Science、PLOS、EMBOなどの学術誌に投稿する際には、ORCID IDの入力が必須になっています。さらに、MUSTではないものの、ORCID IDを入力できる雑誌が3000誌を越えています。将来的に、全世界の研究者がORCID IDを取得すれば、研究者は様々なメリットを受けられることになります。

論文リストを簡単につくれるということもメリットの一つですが、ORCID IDは、名寄せ問題の解決から、さらに大きな広がりを見せつつあります。

たとえば、ある雑誌では、論文の査読をすると、査読終了後に、この雑誌の査読をおこなったという証明をしてくれ、それが、ORCIDの画面に表示されるようになります。つまり、論文査読が研究者の実績として、きちんと証明されることになります。

英国のウェルカムトラスト財団は、研究費の申請の際に、ORCID IDの入力が必須ですが、研究費を取得した際には、研究費を取得した旨がそのまま、ORCIDの画面に表示されるようになっています。日本の科研費もこのような仕組みになるといいですね。

また、ORCID IDを論文投稿や査読などのログインの際に使うことができます。そうすると、所属施設が変わった場合も、ORCID側の登録情報を変えておけば、いちいちログインの際に変更したり、様々な個人情報を書き込まなくても良いのです。

ORCIDは非営利団体で、加入会員からのメンバーフィーで運営されています。メンバーは450を越える出版社や組織、大学などですが、いまのところ、日本の大学は、まだ、メンバーになっている大学はありません。

ORCIDはインフラであって、研究者にとって大きなメリットのある仕組みですが、研究者が主体的に参加して、はじめて機能するものです。すでに、ORCID IDを取得されている方もいらっしゃると思いますが、まだのかたは、是非、ORCID IDを取得してみてください。

ちなみに、私のORCID IDは
http://orcid.org/0000-0002-7876-7661
です。

2011.02.03

ZoteroとMendeley

珍しく、学内で、文献データベースの講演があったので、聞きに行きました。

演者は、東京歯科大学の新谷先生。主に、ZoteroMendeleyの紹介をして下さいました。

すっかり、最近この手の話題に弱くなったので、すっきり頭を整理できてよかっです。

  • ZoteroはFirefoxのプラグインだが、文献管理ソフトウェアとしても、参考文献作成ツールとしても、完成度が高い。
  • Mendeleyは、スタンドアローンのソフトウェアとウェブベースのソフトで提供されていて、両者が、同期を取る形。ちょうど、Evernoteと同じ。参考文献作成ツールとしての完成度がやや劣るが、将来的には、Mendeleyはそれも改善されるであろう。
  • どちらも、無料版でだいたいのことができるが、容量を増やすには有料版が必要。これも、Evernoteと同じビジネスモデル。
  • どちらも、既存のPDFを読み込んでライブラリを作成可能。
  • どちらも、PDFファイルをクラウド上に置くことができる。
  • 現時点でのおすすめは、Mendeley。

Endnoteの時代は終わりつつあるのだなと、ちょっと、さびしくもあり。

講演が終わった後、挨拶したら、「よく存じ上げてます。ご挨拶が遅くなってすいません」と言われて、びっくり。こちらが、恐縮してしまいました。

部屋に戻る途中、病院の地下の廊下で、初対面の若い医師に、「はじめまして。○○と申します。イラストレーターとか、いろいろお世話になっています」と言われて、こちらもびっくり。

コンピュータ関連のことは、まったくの趣味でやっているので、いつの間にか、他の人の役になっているのであれば、それはうれしいことです。

でも、この手の話題、本に書いたり、ブログで書いたりしているけど、自分の大学の中では、一度も話したりしたことはないんだなと気がつきました。

2006.09.20

EndNote X Macintosh版 販売開始

EndNote X Macintosh版が販売開始され、私の手元にも届きました。

今回の主な強化点は、

  • 搭載されている投稿規程のスタイル数は、2,300種類以上
  • 相対パスでのリンクによりPDFファイルへのリンク切れを回避
  • ドラッグ&ドロップするだけの簡単操作でPDFファイルをリンク付け
  • ライブラリの圧縮アーカイブ化機能により容易にバックアップ・共有
  • ライブラリ画面のフィールドを8つまで表示可能
  • 未入力フィールドを非表示にすることでレファレンス画面でのスクロール操作を低減
  • 日本語OS環境での親和性向上
  • Intel Mac ネイティブ対応で動作速度向上        
  • カスタマイズ可能なツールバー        
  • 手軽に検索できるSearch Library 検索ボックスをツールバーに追加可能

だそうですが、Intel Macにネイティブ対応したということ以外、あまりメリットがなさそうです。そもそも、EndNote自体動作速度が問題になるようなソフトではありません。むしろ、ライブラリが旧バージョンと互換性がなくなったので、 以前のライブラリをコンバートするためには、EndNote X をRosetta上で起動させる必要があるようなので、とりあえず、インストールはしばらく見合わせることにしました。

2006.07.03

Google Scholar日本語版の提供始まる

今日気付いたのですが、いつのまにか、Google Scholarの日本語版が始まっていました。

英語で検索すれば今まで通りの検索結果が得られますが、日本語版では、日本語で検索することもできます。

ただし、実用度は?というとまだまだという状態です。これは、日本語の論文の電子化およびwebへの掲載が進んでいないこと、Pubmedに相当するような日本語の論文検索データベースが存在しないということがあるのだと思います。日本語版Google Scholarが使い物になるようになるにはまだまだ時間がかかると思います。

ちなみに、私自身いくつか日本語の論文も書いていますが、私の名前で調べても一つも私の論文は引っかかってきません。でも、「もしかして:角川」って、、、、。

Google Sholar 日本語版

2006.04.22

Google Scholarに新機能

今までGoogle Scholarでの検索結果は、関連度の高い順、つまり、被引用数の高い順に並んでいました。当然のことながら、古い論ほど被引用回数が多くなるので、検索結果の先頭の方には、古い論文が並ぶことになります。検索結果を新しいものから順番に並べられないことは、Google Scholarの欠点の一つだったわけですが、今回、その欠点を一部解消するような機能が追加されました。

この新機能は、Google Scholarの検索結果画面の右上に表示される2つのリンク「All articles」「Recent articles」です。通常は、「All articles」がデフォルトとなっており、この場合は、今までと同じように関連度の高い順に並びます。しかし、「Recent articles」の場合、ランキングアルゴリズムが変更され、論文が発表された年や、最近発表された論文の中で多く引用されているか、などが考慮され、最近の研究動向が重視された並び順となります。したがって、完全に新しい順に検索結果が並ぶというわけではありませんが、ソートのオプションができたことはひとつの進歩だといえます。

Google Scholarの解説記事もごらんください。

参考:「Google Scholar」に最近の研究動向を調査するための新機能(Internet Watch)

2006.04.20

Windows Live Academic Search

米Microsoftは4月11日 、学術文献検索サービス「Windows Live Academic Search」のベータ提供を開始しました(参考:MY COM PC WEB「MSが学術文献検索サービス、リサーチツールとしての独自機能で勝負」)。Google Scholar(研究留学ネットの解説記事)のライバル出現ということになりますが、さっそく使ってみようと思ったら、Safariでは使えず、いきなり気持ちが萎えてしまいました。しかたなく、Firefoxで使ってみました。

Windows Live Searchにタブの形で埋め込まれています。 検索結果画面は2ペインになっていて、左側のペインに並ぶ検索結果の上にカーソルを合わせると、右側のペインにタイトル/概要/著者/出版元/出版年など詳細情報が表示されます。検索結果を、関連度のほか、日付でソートしたり、著者、雑誌、カンファレンスなどでグループ化することが可能です(これは、Google Searchにはない機能)。また、右側のペインには、文献管理用にBibTeXとEndNote形式のデータが表示されます。ただし、必ずしもすべての文献にEndnote形式のデータがついているわけではないようです。

Google Scholarの使い方としては、「Google検索を検索対象を学術論文に絞る」という使い方が多いと思いますが、Windows Live Academic Searchでは検索対象が狭いのか、検索結果の数がGoogle Scholarに比べて、かなり少ないです。たとえば、"anti-cre antibody"で検索すると、Google Scholarでは8件、Windows Live Academic Searchでは66件です。 "monkawa"で検索すると、 Google Scholarでは33件、Windows Live Academic Searchでは898件です。これは、Google Scholarが全文を検索しているのに対して、Windows Live Academic Searchでは、抄録しか検索していないのかもしれません。

また、Google Scholarには目玉機能として、「Cited by」という被引用文献のリンクがついていますが、Windows Live Academic Searchにはありません。

いかにもAjaxな使い勝手がもっさりしていますし、現時点ではGoogle Scholarに対するアドバンテージはほとんどないというのが私の感想です。

2006.03.30

研究に有用なソフトウェア -文献管理ソフト

現在、研究に有用なソフトウェアを大幅改訂中。今日は文献管理ソフトをまとめてみました。

ソフト Platform コメント
Endnote
ユサコ
Win, Mac 文献管理ソフトの代表的ソフト。詳しくは、下記の解説を参考に。¥52,290、¥20,790(S)
GetARef
大学生協
Win 値段がお手頃なこともあり、最近、人気が出てきている文献管理ソフト。大学生協によって日本語化もされています。詳しくは、下記の解説を参考に。¥20,790(A)、¥13,440(S)
iPapers Mac iTunes ライクなインターフェイスで文献PDF ファイルを管理するためのソフト。詳しくは、下記の解説を参考に。フリーウェア。
RefWorks
サンメディア
webベース webベースの文献管理ソフト。サンメディアによって日本語化もされています。詳しくは、下記の解説を参考に。個人契約だと年間13,000円
WriteNote
ユサコ
webベース RefWorksと同様のwebベースの文献管理ソフト。サイトライセンス制。
ProCite
Win, Mac アメリカでは結構メジャーだが、日本ではあまり見かけない。$299.95, $109.95(S)
Reference Manager
ディジタルマネージメント
Win アメリカでは結構メジャーだが、日本ではあまり見かけない¥59,850, $299.95, $109.95(S)
Bookends Mac Mac用の比較的安価な文献管理ソフトとして意外と人気あり。$99, $69(S)
Sente Mac Mac用の比較的安価な文献管理ソフトとして意外と人気あり。アップルMedicalでも紹介。$99.95, $49.95(S)
refEDITX Mac Mac OS Xで動くフリーウェア
RT2 Win, Mac ファイルメーカーをテンプレートとして作られた文献管理ソフト。ファイルメーカーのランタイム版になっているので、ファイルメーカーを持っていなくても使える。日本語。フリーウェア。
BibCompanion Mac BibTeXの文献データベースファイルを編集するためのソフト。PDFファイルへのリンクも可能。日本語。フリーウェア。
pArticles Mac iTunes ライクなインターフェイスで文献PDF ファイルを管理するためのソフト。フリーウェア
BibDesk Mac BibTeXの文献データベースファイルを編集するためのソフト。使用感。フリーウェア。
Ref for Windows Win Windowsで動く文献管理のフリーのソフト。日本語。
Bunso Win Windowsの文献管理ソフトのフリーウェアとして人気がありましたが、残念ながら開発中止となってしまいました。

※(A)はアカデミック版価格。(S)は学生版価格。

 

この中から、代表的なソフトを紹介します。

Endnote

定番の文献管理ソフトです。特に、論文を書くときのReference作成の際に威力を発揮します。私自身論文を書くのに欠かせないソフトです。Mac版、Win版があり、最新版はver.9。

日本での購入はユサコ株式会社を通して購入します。新規購入は¥52,290、学生版は¥20,790です。アメリカでは、初回購入が¥299.95(オンラインダウンロードであれば、$239.95)、学生版が¥109.95、アップグレードは$99.95、オンラインダウンロードによるアップグレードなら$89.95です。中身は英語版そのものですが、残念ながら日本からはダウンロード版を購入できず、割高になってしまいます。

Endnote関連本は「研究者の書棚」>「コンピュータ関連本」をご覧下さい。

Endnoteを使用したソリューションについては「研究者のためのコンピュータ情報」>「電子リソース、文献管理」をご覧下さい。

 

GetARef

getarefEndnoteに近い機能を持ったソフトで、「文献管理データベース」と「参考文献リスト作成機能」を併せ持った論文作成支援ソフトウエアです。スウェーデン生まれのソフトですが、大学生協が日本語化して、販売しています。医中誌などの日本語のデータも問題なく扱えます。Windowsのみです。アカデミック版は20,790円、学生版は13,440円で、Endnoteに比べて、かなり割安になっています。

GetARefの関連本はありませんが、「研究者のための文献管理PCソリューション」に1章かけて詳しく操作方法が解説してあります。

 

iPapers

iPapersiPapersにはReferenceを書き出す機能はありません。インターネットでダウンロードした文献PDFファイルをiTunesによく似たインターフェースでデータベース化して整理することに特化したソフトです。一度使ったら手放せないソフトです。Mac OSX 専用のフリーソフトです。

 

Refworks

refworksRefWorksは簡単に言うとEndnoteのオンライン版です。ユーザーが集めた文献情報は米国にあるRefWorksサーバー上に蓄積されます。そして、フォーマットしたいWordファイル(文献引用箇所には{{23}}という形でマーキングしておく)を指定すると、目的のJournalスタイルに合わせて引用文献が書き込まれたWordファイルをはき出してくれます。基本的にはEndnoteとワークフローは同じです。WEBベースの文献情報管理ツールってどういうしくみなんだろうと思っていましたが、当初予想していたよりよくできていました。個人契約だと年間13,000円。所属大学が契約していれば、無料で利用できます。

Endnoteと比較した場合、オンラインゆえ手順が多くなったり、変更が直ちに反映されなかったり、オンラインのレスポンスがいまいちだったりといった具合に、使いごこちにはEndnoteに軍配が上がります。したがって、私が今すぐEndnoteからRefWorksに乗り換えることはないのですが、RefWorksのいくつかのアドバンテージは見逃せないものです。一つは、WEBベースのアプリケーションで、ソフトも継続的にアップデートされているため、ソフトがうまく使えないということがないということ。Endnoteの場合、不具合が結構多く、特に、Wordがアップデートされると、急にEndnoteが使えなくなるということがこれまでにも何回も起こりましたが、こういった現象は基本的にはないという安心感があります。もう一つは、日本語が問題なく使えると言うことです。Endnoteも最新バージョンはユニコード化され日本語が使えるのですが、医中誌のデータは読み込めないなどの問題があります。しかし、RefWorksの場合、医中誌の読み込みも問題なく、PubMedと医中誌のデータが混在した引用文献リストも問題なく作れます。

2006.02.19

Endnoteに医中誌Webデータを取り込む方法

Endnoteはversion 8からユニコード対応になりましたが、この変更によって、医中誌Webなどの日本語のデータベースからの読み込みがうまくいかないという状況になっていました。

このたび、ユサコが登録ユーザー専用ページで医中誌WebのImport Filterを配布を始めました。これによって、Endnote 8と9で医中誌Webのデータを読み込むことができるようになりました。詳しい方法はユサコのサイトにありますが、少しコツが必要なので方法を紹介します。ここでの説明はEndnote 8 Mac版を用いています。

1. 医中誌Webから文献データの出力形式を 「Refer/BibIX形式」 と指定してダウンロードする。

2. ダウンロードしたテキストファイルをBOM付きのUTF-8形式のファイルに変換する。たとえば、Jeditであれば、Preferenceにおいて、「UTF-8書類は先頭にBOMを付加して保存する」にチェックを入れた後に、UTF-8形式で別名保存します。

3. ユーザー専用ページより、医中誌Web用のImport Filter をダウンロードして入手し、アプリケーション/EndNote 8/Filtersにおく。

4. Import FilterにIchu_Ref.enfを指定してImportする。

5. 以上で読み込みが完成。

 

なお、JDreamおよびJDreamIIのFilterも配布しており、JDreamおよびJDreamIIのデータの読み込みも可能になっています。その方法はユサコのサイトをご覧になって下さい。

 

関連情報は「電子リソース、文献管理」をご覧下さい。

Endnote関連書籍は研究者の書棚コンピュータ関連本をご覧下さい。

2006.02.07

米国でのオープンアクセス義務化へ

2004年9月、NIHは、NIHの助成した研究成果について、最終原稿のデジタルファイルをNLMが運営するデジタル・リポジトリであるPubMed Centralに収録し,出版6か月後(出版社の同意があればさらに短期間)に誰にでも無料でアクセス可能とする計画を発表しました。 しかし、この計画は学術出版社からの大きな反発を受け、1年以内にPubMed Centralにデポジットすることを推奨するという無難な内容に後退してしまいました。

その後、雑誌単位ではなく、個人によって(Author Manuscriptと表示される)どのくらいの論文がPubMed Centralにデポジットされたかというと、きわめて少なく、 NIHのパブリック・アクセス方針が実施されてから2ヶ月経った7月2日現在ではわずか300件に過ぎなかったとのことです(Science, 309:696))。

2005年12月になって、オープンアクセス化を義務づける新たな法案、通称CURES法案が米国上院議会に提出されました。同法案には、NIH内にthe American Center for Curesを設置することや、Department of Health and Human Services(NIHを含む)の助成を受けた研究成果をPubMed Centralに出版後6ヶ月以内に登録する義務があることなどが盛り込まれています。オープンアクセス化に向けてさらに踏み込んだ内容になっています。

果たして、出版社側はどのような対応を取るのでしょうか。我々、研究者にはオープンアクセスはうれしい限りですが、出版社が立ちゆかなくなれば、その根底が揺るいでしまうことになります。

参考資料:

カレントアウェアネス:英米両国議会における学術情報のオープンアクセス化勧告

USACO NewMediaNews:米国でのオープンアクセス義務化の動向

SPARC Open Acess Newsletter:The U.S. CURES Act would mandate OA

次回は、オープンアクセス化の動向全体についてまとめてみようと思っています。

2006.02.05

Google Scholar追加

先日、Google Scholarについて書きましたが、一つだけ追加を。引用情報に関しては、無料であるということ以外に、Web of Scienceに対するアドバンテージはないというのは確かだと思うのですが、Google ScholarがPubMedやWeb of Scienceに対して大きなアドバンテージが一つあることを書きそびれていました。

それは、PubMedとWeb of Scienceが主にabstractを対象にして検索をかけているのに対して、Google Scholarは全文を対象にして検索をかけているという点です。 たとえば、実験で使う特定の試料について調べる場合などに大きなアドバンテージになります。一つ例を挙げてみましょう。

Covance社が出している抗Cre recombinase抗体を使った論文を調べたいと思って、「cre antibody covance」で検索をかけてみます。PubMedでは一つも文献が引っかかりませんが、Google Scholarでは251件もひっかかります。もちろん、Googleを使ってもいいのですが、Googleそのものを使ってもいいのですが、文献だけに絞って検索したいという場合は、Google Scholarはとても有効です。

関連情報はバイオ研究情報Google Scholar をご覧下さい。

2006.01.30

業績リストの作り方 被引用回数付き

その論文がどのくらい重要かを示すひとつの指標に「被引用回数」があります。インパクトファクターはある雑誌の各論文の被引用回数の平均値であり、実際には同じ雑誌の中でもより多く引用される論文もあれば、あまり引用されない論文もあります。したがって、個々の論文の被引用回数の方が、より正確な指標と考えられます。

そのような事情もあり、ときに、被引用回数を明記した業績リストの提示が必要になることがあります。個々の論文の被引用回数を調べる方法としてはWeb of Scienceを使うことになります。Google Scholarでも被引用回数らしきものは調べられますが、Google Scholarがどのような雑誌をカバーして、どのような方法で被引用回数を計算しているのか明示していない以上、デファクトスタンダードであるWeb of Scienceを使わなければならないと考えます。

ここでは、Web of ScienceとEndnoteを使った被引用回数付きの業績リストの作り方を説明します。もちろん、Web of Scienceで論文をひとつずつ被引用回数を調べて、手作業で業績リストに追加してもいいのですが、なるべく自動化してみます。 なお、ここで紹介する方法は慶應義塾大学信濃町メディアセンターの主催する電子リソース活用講座の内容をベースにしています。また、EndnoteのバージョンはMac OSX版のEndnote 8を使用しています。

手順1: Web of Scienceの「General Search」で、自分の論文を全部集めます。実は、これが大変な作業であることが多く、SuzukiさんやTanakaさんといったよくある名前の方の場合、研究施設や共同研究者の名前を使ってうまく絞り込む必要があります。こういったとき、私のような珍名は便利です。「Monkawa, T*」で一発ですから。なお、完全に絞り込まなくても、Endnoteに持っていった後で、いらないものを削除した方が楽です。

手順2a:1回の検索で該当論文が集められたときは、画面右のOutput Recordsで、「All records on page」をチェックし、Full Recordを選択して、「SAVE TO FILE」をクリックします。次に出てくるSave OptionのページではField Tgged (Simple text)を選んでダウンロードします。デスクトップにsavedrecs.txtというファイルができます。

手順2b:1回の検索では該当論文を集められないような場合には、該当論文をチェックして、「ADD TO MARKED LIST」をクリックし、該当論文を集めます。集めた該当論文は「Marked List」にありますので、そこから、ダウンロードします。その際、Output Options で「times cited」にはチェックがついていないので、忘れずにチェックを入れて下さい。そして、「SAVE TO FILE」でダウンロードします。デスクトップにsavedrecs.txtというファイルができます。

手順3:あとは、Endnoteにsavedrecs.txtの情報をインポートしてやればいいのですが、そのままインポートすると、被引用回数(Times Cited)がインポートされません。そこで、まず、Web of Scienceのインポートフィルターに少し手を加えてTimes CitedがEndnoteに反映されるようにします。

まず、メニューからEndnote 8 > Preferences... を選び、Reference Typesを選択して、「Modify Reference Types」ボタンを押します。「Edit Reference Types」というウィンドウが開きますので、Custom 1という項目を探します。通常、ここは空欄になっているので、「Times Cited」と入力してOKを押します。

次にメニューからEdit > Import Filters > Open FIlter Managerを選び、「Web of Science (ISI). enf」にチェックを入れて「Edit」ボタンを押します。左のコラムからTemplatesを選び、タグ「TC」のFIeldが{IGNORE}になっているのをTimes Citedに変更します。オリジナルのフィルターはそのままにしておきたいので、メニューからFile > Save As...を選び、 名前をWeb of Science with TCにでも変更しておきましょう。

手順4:適当な名前を付けた新規のライブラリーを作製し、メニューからFile> Importを選び、先ほどダウンロードしたデスクトップのsavedrecs.txtを選択。Import Optionには「Web of Science with TC. enf」を選んで、Importをおこないます。

手順5:メニューからEndnote 8 > Preferences... を選び、Display Fieldsを選択して、Colum 5のFielsdをURLからCustom 1にして、HeadingにTimes Citedとしてみて下さい。

被引用回数が表示されるようになります。

手順6:あとは、業績リストを書き出すためのフォーマットを作ることになります。ここでは、Vancouverスタイルに被引用回数を付けたものを作ります。メニューからEdit > Output Styles > Open Style Managerを選び、「Vancouver.ens」にチェックを入れて「Edit」ボタンを押します。左下ラムのBibliography > Templatesを選び、Journal Articleを

Author. Title. Journal Year|;Volume|(Issue)|:Pages| (`Times Cited:` Times Cited).

と書き換えます。「Vancouver with TC」という名前で別名保存しておきます。

手順7:メニューから「File」>「Export...」を選び、書き出すファイルの名前を付けます。これで、以下のような形の業績リストのテキストファイルが作製できます。

1. Kawasaki M, Uchida S, Monkawa T, Miyawaki A, Mikoshiba K, Marumo F, et al. Cloning And Expression Of A Protein-Kinase C-Regulated Chloride Channel Abundantly Expressed In Rat-Brain Neuronal Cells. Neuron 1994;12(3):597-604 (Times Cited: 167).

2. Monkawa T, Miyawaki A, Sugiyama T, Yoneshima H, Yamamotohino M, Furuichi T, et al. Heterotetrameric Complex-Formation Of Inositol 1,4,5-Trisphosphate Receptor Subunits. Journal Of Biological Chemistry 1995;270(24):14700-14704 (Times Cited: 130).

3. Hayashi M, Sasaki S, Tsuganezawa H, Monkawa T, Kitajima W, Konishi K, et al. Expression And Distribution Of Aquaporin Of Collecting Duct Are Regulated By Vasopressin V-2 Receptor In Rat-Kidney. Journal Of Clinical Investigation 1994;94(5):1778-1783 (Times Cited: 117).

4. Yoshikawa F, Morita M, Monkawa T, Michikawa T, Furuichi T, Mikoshiba K. Mutational analysis of the ligand binding site of the inositol 1,4,5-trisphosphate receptor. Journal Of Biological Chemistry 1996;271(30):18277-18284 (Times Cited: 77).

5. Monkawa T, Yoshida T, Wakino S, Shinki T, Anazawa H, DeLuca HF, et al. Molecular cloning of cDNA and genomic DNA for human 25-hydroxyvitamin D-3 1 alpha-hydroxylase. Biochemical And Biophysical Research Communications 1997;239(2):527-533 (Times Cited: 70).

(以下略)

2006.01.28

業績リストの作り方 ウェブ公開用

最近は、研究室のウェブサイトなどに業績リストを載せることも多くなっています。その際に、PubmedのAbstractのリンクをつけると便利です。こんな感じですね。

1. Monkawa T, Pippin J, Yo Y, Kopp JB, Alpers CE, Shankland SJ. The cyclin-dependent kinase inhibitor p21 limits murine mesangial proliferative glomerulonephritis. Nephron Exp Nephrol 2006;102(1):e8-18. [PubMed]

このような業績リストの作り方を紹介します。

方法1:Endnoteを使う方法

Endnoteをお持ちの場合は以下のようにします。

手順1:自分の発表した論文を集めたライブラリを作成します。このとき、かならず論文情報はPubMed(NLM)から探し出します。PubMedから論文情報を取得すると自動的にPubmedのURLが含まれています。

手順2:ReferenceにPubMedのURLが含まれるようにVancouverスタイルを修正します。具体的には、BibliographyのTemlatesのJournal Articleを

Author. Title. Journal Year|;Volume|(Issue)|:Pages|. [<a href="URL">Pubmed</a>]</p>

とし、BibliographyのLayoutのStart each reference with:を、

<p>Bibliography Number.

とします。なお、私が作ったものがあるので、よければ使って下さい。

VancouverURLをダウンロード

手順3.メニューから「File」>「Export...」を選び、書き出すファイルの名前を○○○.htmlとします。

このファイルの先頭に

<!DOCTYPE HTML PUBLIC "-//W3C//DTD HTML 4.01 Transitional//EN"
"http://www.w3.org/TR/html4/loose.dtd">
<html>
<head>
<meta http-equiv="Content-Type" content="text/html; charset=Shift_JIS">
<title>業績リスト</title>
</head>
<body>
<h1>業績リスト</h1>

後ろに

</body>
</html>

をつけると、ウェブ公開用の業績リストが完成です。

完成版はこんな感じです。

 

方法2:PubListMakerを使う方法

Endnoteをお持ちでない方は、PubList Makerを使うのが便利です。Pubmedのリンク付きのスタイルを選んで、1つずつ貼り付けることになります。

2006.01.27

業績リストの作り方 基本編

CVや研究費の申請、いろいろな場所で業績リストが必要になってきます。もちろん、一から全部自分でタイプしてもいいのですが、比較的簡単に業績リストを作る方法を紹介します。

方法1:Endnoteを使う方法

もし、Endnoteをお持ちであれば、Endnoteを使うのが簡単です。

手順1.自分の発表した論文を集めたライブラリを作成します。生物医学系であれば、論文情報はPubMed(NLM)から探し出すのが普通でしょうが、Web of Science (ISI)からでもいいでしょう。

手順2.書き出すReferenceの体裁を指定します。特に指定がなければVancouverスタイルでよいでしょう。指定があれば、その形式を指定するか、なければ自作します。

手順3.デフォルトのVancouverスタイルは、そのままの順番でReferenceが並びますので、手順4に進む前にReferenceの順番を新しい順や古い順などご希望の順番にソートし直しておきます。もっと細かい条件でソートしたい場合には、VancouverスタイルのBibriography Sort Orderを手作業で修正します。

手順4.メニューから「File」>「Export...」を選び、書き出すファイルの名前を付けます。これで、以下のような形の業績リストのテキストファイルが作製できます。

1. Monkawa T, Pippin J, Yo Y, Kopp JB, Alpers CE, Shankland SJ. The cyclin-dependent kinase inhibitor p21 limits murine mesangial proliferative glomerulonephritis. Nephron Exp Nephrol 2006;102(1):e8-18.

2. Petermann AT, Pippin J, Durvasula R, Pichler R, Hiromura K, Monkawa T, et al. Mechanical stretch induces podocyte hypertrophy in vitro. Kidney Int 2005;67(1):157-66.

3. Kobayashi K, Monkawa T, Hayashi M, Saruta T. Expression of the Na+/H+ exchanger regulatory protein family in genetically hypertensive rats. J Hypertens 2004;22(9):1723-30.

4. Hayashi M, Tsuchiya Y, Itaya Y, Takenaka T, Kobayashi K, Yoshizawa M, et al. Comparison of the effects of calcitriol and maxacalcitol on secondary hyperparathyroidism in patients on chronic haemodialysis: a randomized prospective multicentre trial. Nephrol Dial Transplant 2004;19(8):2067-73.

(以下略)

この方法であれば、新しい業績が追加されたときでも簡単に追加でき、業績リストのフォーマットを変更するときも簡単にできます。

 

方法2:PubListMakerを使う方法

Endnoteをお持ちでない方はどうすればよいか?さすがに全部打ち込むのは大変なので、少しだけ楽ができる方法をご説明します。私が書いたプログラムPubListMakerを利用します。この方法では、業績リストに載せる論文を一つずつPubMedで探しだし、PubList MakerでReference情報をVancouver形式で抜き出すということを繰り返します。PubList Makerについてはこちらで概略を見ておいて下さい。

手順1.PubList Makerをブラウザのお気に入りに登録します。

PubList Maker

Internet Explorerの場合、上のリンクを右クリック(Macの場合はCommand+クリック)し、「お気に入りに追加」を選びます。このとき「追加しようとしているお気に入りは、安全でない可能性があります。続行しますか?」というメッセージが表示されますが、「はい」をクリックしてください。もしくは、リンクバーを表示させた状態で、上のリンクをドラッグし、リンクバーの上でボタンを離します。Safariは後者の方法でしか登録できません。登録したPubList MakerのURLが

javascript:var%20u=document.location.href;var%20ai=u.indexOf
('%26list%5Fuids%3D');var%20uid=u.substring(ai+11,ai+19);
w=window.open('http://www.kenkyuu.net/cgi-publistmaker/
publistmaker.cgi?uid='+uid);

になっていればOKです(実際には改行なしの1文です)。

手順2.自分が業績リストに加えたい論文をPubMedで探します。もちろんどんな論文でも使えますが、ここでは例として私が昔書いた論文をあけてみて下さい。

手順3.そのページを開けたまま(最前面にある状態)で、さきほど登録したPubList Makerのお気に入りをクリックしてみて下さい。こんなページが開くはずです。あとは、このページの中の気に入ったスタイルの文献をコピーペーストすれば、簡単に業績リストができあがります。

手順4.業績リストにのせる論文について手順2〜3を繰り返します。

あまりたくさんの論文になるとちょっと大変ですが、自分で一からタイプするよりはよいでしょう。

2006.01.15

Google Scholar その2

昨日に引き続いてGoogle Scholarその2です。

■Google Scholarの「Cited by」

文献ごとの引用関係がわかるデータベースとしてはWeb of Scinceが有名です。雑誌ごとの掲載論文1報あたりの年間の平均引用回数を指標化したものはインパクトファクターとよばれ、近年では雑誌の優劣の重要な指標になっています。各論文ごとの引用回数や引用している論文へのリンクはWeb of Scienceの「Times Cited」機能で実現されており、Google Scholarの「Cited by」は機能としては同じものといえます。Web of Scienceの詳しい説明についてはこちらをご覧下さい。

引用情報が重要なのは引用回数自体が論文の重要性を判定するひとつの指標であるだけでなく、逆引き機能として利用できるという点です。たとえば、2000年に報告されたある論文に目を付けて、関連論文を探そうと思った場合に、2000年以前の関連論文は引用文献としてすぐに見つけることができます。しかし、2000年以降の関連論文を見つけるのは大変なことです。その場合、Web of Scienceの「Times Cited」のリンクやGoogle Scholarの「Cited by」のリンクをたどることで、その論文を引用している論文(2000年以降に報告された)を探せるのです。

Web of Scienceは契約料がとても高いデータベースで、 契約をしていない大学図書館も多いようです。無料で引用関係が調べられるデータベースは現在のところ、Google Scholarしかなく、その点だけでもGoogle Scholarの存在価値は高いといえます。

しかし、問題になるのは、Web of Scienceで計算された引用回数とGoogle Scholarで計算された引用回数が同じかという点です。 そこで、その点を実際の論文を使って検証してみました。検証に使ったのは私が書いた6つの論文で、2006.1.14現在での引用回数を示します。

  Web of Science Google Scholar
JASN, 13:1172-8, 2002 27 30
KI, 58:559-68, 2000 16 18
JASN, 11:65-70, 2000 25 10
KI, 53:296-30, 1998 18 16
BBRC, 239:527-533, 1997 70 54
JBC, 270:14700-14704, 1995 133 95

これを見ると、1つの例外を除き、Google Scholarの方が引用回数が少なく、検索対象として拾っている論文の数が少ないことがわかります。また、両者の差は論文によってかなりばらつきがあります。

どのような文献を引用文献としてリストしているのかを実際に眺めてみると、Web of Scienceの方が検索対象の雑誌の範囲が広いだけでなく、Google Scholarの場合は、JASN, 11:65-70, 2000 を引用している論文がKI誌に複数あるにもかかわらず、ひとつしかリストアップしていないということがわかりました。つまり、Google Scholarの検索範囲は必ずしも雑誌単位ではないということです。現時点でのGoogle Scholarの「Cited by」に示される数は、正確な引用回数として使えるようなものではなく、あくまでも目安に過ぎないと言えます。

Google ScholarのCited byがより正確な指標になるためには、Google Scholarがどのような論文を検索対象としているのかがきちんと公開されないといけないでしょう。ただし、Web of Sceinceが使えないという人も多く、Google Scholarは無料で提供される引用関係を含むデータベースとして貴重なデータベースであることには違いがありません。

 

■まとめ

では、私はGoogle Scholarを使うかと聞かれれば、ほとんど使わないと答えますが、それは現在、引用関係を調べるためのデータベースとしてはWeb of Scienceが自由に使えるという恵まれた立場にあるからで、使えなくなれば、Google Scholarを使う機会は増えるでしょう。

関連情報はバイオ研究情報Google Scholar をご覧下さい。

2006.01.14

Google Scholar その1

Google Scholar のベータ版が公開されて1年余りが経ちます。いまだ、ベーター版であるにもかかわらず、Google Scholarを利用している人の数はかなり増えているようで、最近、相次いでNew England Journal of MedicineとBritish Journal of Medicineに記事が掲載されました。High Wire Pressにホストされている844の学術雑誌にアクセスする検索エンジンの56.4%がGoogle、8.7%がPubMed、3.7%がGoogle Scholarとなっていて、Google Scholarも結構使われるようになっています(NEJM, 354:4-7, 2006)。また、BMJにアクセスした検索エンジンの1位はGoogle、2位はGoogle Scholarで、それぞれPubMedの10倍近い頻度であるとのことです(BMJ, 331:1487-1488, 2005 )。

このように、Google Scholarを使った検索はPubMedを使った検索と肩を並べるほどになってきました。とはいっても、これは研究機関に属さない一般の人の利用を含んだデータであり、医学生物学者が文献を調べるには、PubMedに圧倒的な優位がありますが、Google ScholarにはPubMedにはない機能もありますので、Google Scholarについてまとめておきたいと思います。

 

■Google Scholarとは

通常のGoogle検索では文献以外にもネット上のあらゆるドキュメントが検索対象になっていますので、学術情報以外の多くのノイズを拾ってしまいます。Google Scholarは検索対象を学術論文、学位論文、書籍、学術出版会社や学会、学術機関からの抄録や論文といった学術情報に絞ることで、インターネット上の学術情報に特化した検索エンジンとなっています。

 

■Google Scholarの機能

Google Scholarは非常にシンプルなインターフェースであり、Google同様、検索窓に検索語を打ち込んでボタンを押すだけです。検索結果は関連度が高い順にリストアップされると当時に各検索結果には次のようなリンクが提供されます。

  • 引用回数の表示と引用文献へのリンク「cited by」。
  • 著者名、論題からのキーワード抽出によるGoogle検索のためのリンク「Web Search」。
  • その他、出版社該当論文サイトへのリンク、PubMed抄録形式へのリンク、図書館へのリンク、など。

Google Scholar の機能を理解するために、医学生物学系の文献検索データベースとして最もポピュラーなPubMedと比較してみましょう。

まず、根本的な違いとして、PubMedは掲載されている文献データが米国立医学図書館(National Library of Medicine)によって作成されており、人の手によって体系的に構築されたデータになっていますが、Google Scholarはインターネット上に公開されているドキュメント情報をロボットによって網羅的に自動で集めたデータベース(というより検索エンジン)であるということがあります。そのため、Google Scholarの検索結果の制度や提供情報の質には自ずと限界があるといえます。

検索対象ですが、PubMedが医学生物学型の学術論文に限っているのに対し、Google Scholarは医学生物学系に限らず、自然科学系、社会科学系のすべての学術ドキュメント(学術論文のみならず抄録や書籍、プリプリントドキュメントなどかなり幅広い)が対象になっています。また、PubMedの場合、収載誌がhttp://www.nlm.nih.gov/bsd/serfile_addedinfo.htmlに明らかになっているのに対し、Google Scholarの場合、明らかにされていません。実際問題として、Google Scholarは学術情報とはいえない小説なども引っかけてしまい、厳密に学術情報のみに対象を絞り込めてはいないようです。ただし、そのような情報はランキングで下位になるために実際には問題にはなっていません。

PubMedでは検索結果はすべて抄録へのリンクとなっており、抄録のページにフルテキストへのリンクが提供されています。Google Scholarにおいては、フルテキストが提供されている場合には、検索結果が直接フルテキストへのリンクになっています。フルテキストの閲覧権を持たないユーザーがアクセスした場合には、自動的に無料のアブストラクトページや論文購入ページなどへ誘導されるようになっています。

PubMedでは検索結果は出版年の新しいものからソートされてリストアップされますが、Google Scholarでは関連度の高い順引用回数順にソートされてリストアップされます。古い論文の方が比較的上位にランクされるため、この点は使いにくいですね。出版年でソートできるよなオプションをつけた方がよいと思います。

また、PubMedに最近実装された、RSS配信、e-mailアラートサービスなどの付加サービスは、Google Scholarには実装されていません。

以上のように、医学生物系の学術論文情報だけに絞るのであれば、PubMedの優位性は崩れませんが、ひとつだけGoogle ScholarにあってPubMedにはない機能があります。それが、文献の引用関係です。Google Scholarの検索結果にリストアップされる各文献データには、「Cited by」というリンクがついており、その文献が他のどの文献で引用されているか、また、他の論文に引用された回数が表示されます。この「Cited by」の機能がGoogle Scholarの大きな特徴です。この点について次項で詳しく見てみましょう。

続きは明日。

2005.12.08

「デジタル文献整理術」

「デジタル文献整理術」

著者:讃岐 美智義著、税込価格:¥2,625、出版:克誠堂出版、ISBN:477190295X、発行年月:2005.8【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

EndNoteは論文執筆にEndnoteは欠かせないソフトウェアですが、奥が深く、なかなかすべての機能を把握しきれません。分厚い英語のマニュアルを読むよりこの本をおすすめします。作者は讃岐さんという方で知る人ぞ知るという方で、とてもわかりやすく、かつ、役立つ情報が満載の1冊になっています。私はこの本で、医中誌の取り込みの際にはMedline形式ではなく、Refer/BiblX形式でないとダメとわかって、助かりました。改訂新版となっています。

Endnote関連の書籍は「研究者の書棚:英語論文の書き方本」をご覧下さい。

2005.11.07

Refworks

WEBベースの文献情報管理ツールRefWorksを試用してみました。

RefWorksは簡単に言うとEndnoteのオンライン版です。ユーザーが集めた文献情報は米国にあるRefWorksサーバー上に蓄積されます。そして、フォーマットしたいWordファイル(文献引用箇所には{{23}}という形でマーキングしておく)を指定すると、目的のJournalスタイルに合わせて引用文献が書き込まれたWordファイルをはき出してくれます。基本的にはEndnoteとワークフローは同じです。WEBベースの文献情報管理ツールってどういうしくみなんだろうと思っていましたが、当初予想していたよりよくできていました。所属機関が契約していれば、無料で利用できます。個人契約だと$100(RefWorks本社扱い、日本語サポートなし)。

Endnoteと比較した場合、オンラインゆえ手順が多くなったり、変更が直ちに反映されなかったり、オンラインのレスポンスがいまいちだったりといった具合に、使いごこちにはEndnoteに軍配が上がります。したがって、私が今すぐEndnoteからRefWorksに乗り換えることはないのですが、RefWorksのいくつかのアドバンテージは見逃せないものです。

一つは、WEBベースのアプリケーションで、ソフトも継続的にアップデートされているため、ソフトがうまく使えないということがないということ。Endnoteの場合、不具合が結構多く、特に、Wordがアップデートされると、急にEndnoteが使えなくなるということがこれまでにも何回も起こりましたが、こういった現象は基本的にはないという安心感があります。

もう一つは、日本語が問題なく使えると言うことです。Endnoteも最新バージョンはユニコード化され日本語が使えるのですが、医中誌のデータは読み込めないなどの問題があります。しかし、RefWorksの場合、医中誌の読み込みも問題なく、PubMedと医中誌のデータが混在した引用文献リストも問題なく作れます。

というわけで、日頃はEndnoteを使って、日本語と英語の文献が混在するような日本語の総説を書く場合などにRefWorksは使ってみようかと思っています。

2005.03.05

「研究者のための文献管理PCソリューション」

「研究者のための文献管理PCソリューション」

著者:讃岐美智義著、税込価格:¥ 3,780(本体:¥ 3,600)、出版:秀潤社、ISBN:4879622842、発行年月:2005.03【bk1】【amazon.co.jp】【目次

讃岐美智義氏は、これまでにも「デジタル文献整理術 最新EndNote活用ガイド」【bk1】【amazon.co.jp】「デジタルプレゼンテーション」bk1】【amazon.co.jpといった研究者、医者の立場に立ったコンピュータ使い方の本を著しています。どの本もわかりやすく明快な著作であり、私も愛読しています。

本書は比較的初心者の方をターゲットとして、PubMed、医中誌の利用から、EndNote,GetARef,RT2(讃岐氏オリジナルのソフト)などの文献管理ソフトの使用法にも言及しています。まだ、自分の文献検索、整理法が確立していない方に是非おすすめしたいと思います。


関連の書籍は「研究者の書棚:英語論文の書き方本」をご覧下さい。

2005.02.12

My NCBI

Pubmedのデザインが今月から変わったことに気づかれた方も多いと思います。変更点の一つは、タブでフィルターをかけられる機能がついたこと。もうひとつが、My NCBIというサービスが始まったこと。My NCBIは検索式などが保存できるサービスなのですが、一つのポイントがその検索結果を定期的にメールで送ってくれる(automatic e-mail updates)という点です。つまり、以前What's new!でもご紹介したBiomailと同じサービスが本家本元で開始されたというわけです。

automatic e-mail updatesをさっそく使ってみました。

automatic e-mail updatesを利用するためには、まず、My NCBIのアカウントを作る必要があります。右上の「Register」をクリックしてアカウントを作っておきます。

検索したときに、その検索式を保存したいと思ったら、「Save Search」をクリックします。

そうすると、以下のようにAutomatic E-mail Updatesサービス(同じ検索式にマッチする論文が出てきたときにお知らせメールが届く)を希望するかどうか聞かれます。

Automatic E-mail Updatesサービスを希望する場合は、「yes」を選ぶと下のような画面が出てきます。

どのくらいの頻度でメール配信を希望するか?メールのフォーマットを何にするか?新しい論文がないときにはメールをするか?などのオプションを選びます。ここにあるオプションはあとで自由に変更することができます。メールの頻度をEvery dayにした場合には、米国東部時間正午にメールが配信されます。

このような形で、Automatic E-mail Updatesサービスを希望する検索式を100個まで登録できます。登録した検索式は以下のような形で一覧になります。

Automatic E-mail UpdatesサービスがBiomailと比べて優れているのは、

  • 検索語単位で更新メールを出すタイミングを変えることができること。
  • 文献データだけでなく、NCBIデータベースのすべてのデータが対象になること。たとえば、ある遺伝子ファミリーの新しいホモログがGenbankに登録されたらメールでお知らせするという使い方も可能です。
  • 検索語の数の上限が100(Biomailは8)。

Biomailと比べて劣っているのは、

  • 検索語の数だけメールがくるので鬱陶しい。

ちなみに、3回メールがバウンスしたら、メールはストップするそうです。注意してください。

2004.09.17

PubList Maker その後

PubList Maker、私の説明不足でうまく使えなかった方もいらっしゃったようですが、なんとか解決したようでほっとしています。

元はといえば、科研費その他の申請書を書くのに、こんなのがあったら便利だと思ってプログラムを書き始めたのですが、何か、ずいぶん時間を取られて遠回りしたような気もしますが、、、。まぁ、みなさんの評判の上々のようなので、よしとしましょう。

公式ページを作っておきました。

2004.09.15

PubList Maker アップデートしました

使用者の方からのフィードバックなどを含め、PubList Makerをアップデートしました。

アップデート内容は、

  • ウムラウトを正しく表示できるよう、テキストエンコーディングをUTF-8に固定するようにした。
  • In pressの文献も正しく扱えるようにした。
  • 新しいスタイルを追加した。
  • 使用回数がわかるようにカウンターをつけた。

です。引き続きかわいがってやって下さい。

2004.09.14

PubList Maker 作ってみました

2年ぶりくらいにプログラムを書いてみました。

ちょっとした参考文献リストを作ったりしようと思っても、PubMedのページをそのままではコピーペーストできず、

Monkawa T, Miyawaki A, Sugiyama T, Yoneshima H, Yamamoto-Hino M, Furuichi T, Saruta T, Hasegawa M, Mikoshiba K. Heterotetrameric complex formation of inositol 1,4,5-trisphosphate receptor subunits. J Biol Chem. 1995;270(24):14700-4.

というように、ひとつひとつの論文の形を整えるとなると、結構手間がかかりますよね。Endnoteは確かに強力なのですが、「〜に関連する論文を10個くらいあつめてリストを作る」という感じの作業には大げさすぎます。もっと気軽に、PubMedをブラウズしていて、気になる論文をメモしたりできないだろうか?実は、BookmarkletとXMLパーサを組み合わせればできるのではないかと2週間くらい前からアイデアを練っていたのですが、ようやくベータ版が完成しましたので紹介いたします。

PubList Maker(という名前をつけました)はBookmarkletというJavascriptで書かれた小さなプログラムと、本体であるCGIプログラムの組み合わせで成り立っています。説明するより実際に使ってもらった方が、このプログラムの威力がわかりますので、手順を示します。

手順1.PubList Makerをブラウザのお気に入りに登録します。

PubList Maker

Internet Explorerの場合、上のリンクを右クリック(Macの場合はCommand+クリック)し、「お気に入りに追加」を選びます。このとき「追加しようとしているお気に入りは、安全でない可能性があります。続行しますか?」というメッセージが表示されますが、「はい」をクリックしてください。もしくは、リンクバーを表示させた状態で、上のリンクをドラッグし、リンクバーの上でボタンを離します。Safariは後者の方法でしか登録できません。登録したPubList MakerのURLが

javascript:var%20u=document.location.href;var%20ai=u.indexOf
('%26list%5Fuids%3D');var%20uid=u.substring(ai+11,ai+19);
w=window.open('http://www.kenkyuu.net/cgi-publistmaker/
publistmaker.cgi?uid='+uid);

になっていればOKです(実際には改行なしの1文です)。

手順2.自分がPublication Listに加えたい論文をPubMedで探します。もちろんどんな論文でも使えますが、ここでは例として私が昔書いた論文をあけてみて下さい。

手順3.そのページを開けたまま(最前面にある状態)で、さきほど登録したPubList Makerのお気に入りをクリックしてみて下さい。こんなページが開くはずです。あとは、このページの中の気に入ったスタイルの文献をコピーペーストすれば、簡単にPublication Listができあがります。

どうでしょうか?必要ない方にはあまり、理解して頂けないかもしれませんが、ぐぐっと、ツボに入った方もいらっしゃるのではないでしょうか?

ついでに、 webサイトに自分のPublication Listをのせたいという方のために、online publication list用のタグも吐き出すようにしてみました。これを使えば、こんなページも簡単に作れます(実際に5分くらいでできました)。

自分としては結構いいものができたと悦に入っています。基本的には自分用のプログラムなので、ご要望に応えて手を加えるということはしない予定ですが、ご感想やバグ報告など、Guestbookの方でお聞かせ頂ければ幸いです。

なお、本プログラムは自己責任で使って下さい。ベータ版ですので予告なくプログラムをいじる可能性があります。また、あまりたくさんの人が日常的に使うようになると、借りているサーバーに負担がかかってしまうので、停止させることもあり得ます。以上、ご了解の上、ご利用下さい。

公式ページを作っておきました。

2004.02.07

論文のサーベイ

大学院生の頃は、毎日のように図書館に通い、Nature、Science、Cellといった一流紙を始め、分厚いJBCまで、興味のある論文が掲載される可能性のある雑誌はもらさず最新刊をチェックしていました。

最近では、いろいろなインターネットでいろいろなサービスが利用可能で、毎日新着雑誌が来ていないかと図書館に通うことなく、効率的に論文のサーベイができます。

私が利用しているのは、メールによるeTOC (electoric Table of Contents)サービス。自分が毎回目を通す雑誌のeTOCサービスに登録しておくと、その雑誌が発刊になると同時に、Table of Contentsがメールで送られてきます。eTOCサービスを提供していない雑誌もありますが、一流紙と呼ばれるものはほとんどが利用可能です。

もう一つ愛用しているのは、Biomailです。これは、自分の興味のある研究テーマに関して、キーワードを登録しておくと、毎週、そのキーワードでPubmedを検索してくれて、結果をメールで送ってきます。つまり、eTOCで登録している雑誌以外で、自分の興味のあるテーマに関する論文もこの方法で漏らさずピックアップできるわけです。

というわけで、eTOCとBiomailを使えば、図書館に行く必要もなく、効率よく興味のある分野の最新論文をサーベイできます。

2003.07.02

Endnote

EndNoteは一度使った人は二度と手が離せなくなるソフトなのですが、使ったことがない人にEndNoteの便利さを説明するのはなかなか難しいです。

EndNoteの機能は大きく分けて2つ有り、

  1. PubMedなどのデータベースから文献情報を取り込み、文献管理をする。
  2. 雑誌の投稿スタイルに合わせて自動的に参考文献のリストを作成する。

の機能があります。現在は、1の機能をどんどん充実させながら、バージョンアップを続けていますが、私が手放せないのは2の機能があるからです。

少し具体的に書きましょう。たとえば、EndNoteを使わずに論文を書く場合、参考文献リストを作る手順は、論文を引用する場所に論文の番号を書いて、末尾に引用した論文を書くというステップを繰り返して、参考文献リストを作ることになります。

EndNoteを使う場合、引用したい論文をPubMedで見つけ、情報をダウンロードしてEndNoteにlibraryとしてまとめておき、論文を引用したい場所にコピーペーストで引用する印を挿入するだけです。論文が完成した暁にはボタン一つで、参考文献を引用する場所に自動的に参考文献の番号が打たれ、末尾に引用した参考文献のリストを自動的に作ってくれます。

EndNoteを使って参考文献リストを作る場合のメリットは、

  • 論文の番号を打ったり、並べ替えたりする必要がない、
  • 論文の情報はPubMedからダウンロードするので、簡単な上、正確
  • もし、投稿するジャーナルを変更する場合にもボタン一つでスタイルを変えてくれる

といったところになります。使ったことがない方にはこのように説明してもなかなかその便利さが理解されないのですが、はじめて使った人はたいていその便利さに仰天します。

この機能に魅せられ、毎回論文を書くときにはEndNoteのお世話になっています。

数ヶ月前に、EndNote6にバージョンアップしてインストールしたのですが、いろいろと機能が増えいていました。私としては、さきほどあげたEndNoteの機能のうち2の参考文献リストの自動生成としての使い方がメインなわけですが、1のEndNoteを使った文献管理に関しても便利な機能が充実してきています。新しい機能を使うと、新しい文献管理が出来るかもしれません。

たとえば、新しい機能として、EndNoteのlibraryの文献一つずつにリンクが張れるようになりました。つまり、EndNoteで作ったlibraryには、タイトル、著者、抄録などが含まれているのですが、そこに、全文のPDFファイルへのリンクを張ることが出来ます。普通、全文のPDFをダウンロードしてきてもプリントアウトして文献を管理している方がほとんどだと思いますが、いちいちプリントアウトせずにPDFファイルをハードディスクにためておいて、EndNoteで管理するといったことが可能になるわけです。

その他、Palmへの文献データの書き出しなんかもサポートされるようになりました。

EndNoteはこんな具合にとても奥が深いソフトで、なかなかすべての機能を把握しきれないのですが、ちょうど、EndNoteを理解する上で絶好の本が出ていました。作者は讃岐さんという方で知る人ぞ知るという方で、とてもわかりやすく、かつ、役立つ情報が満載の1冊になっています。私はこの本で、医中誌の取り込みの際にはMedline形式ではなく、Refer/BiblX形式でないとダメとわかって、助かりました。

「デジタル文献整理術 最新EndNote活用ガイド」
著者: 讃岐 美智義、本体価格: \2,500、出版:克誠堂出版、ISBN:4-7719-0263-1、発行年月:2003.5【bk1】【amazon.co.jp

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