本の紹介「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」

「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」

著者:橘玲、出版社:幻冬舎 (2010-09-28)、ASIN:4344018850【amazon.co.jp

この作者の著作はたびたび手を伸ばしてしまうのだが、残念ながら、心地よい感覚が残って読み終えたことがない。本書もそうだった。テーマ設定は秀逸で、盛り上げ方は上手なのだが、中身がうすい。

本屋で私の目をひいたのは、「自分を変えることができるか」「他人を変えることができるか」という、第1章と第2章の目次である。著者は、最近話題になった勝間和代と香山リカの論争からスタートして、自己啓発を否定し、「自分を変えることはできない」と主張している。また、第二章では、オウムからスタートし、「他人を変えることもできない」と主張する。

本書のスタイルは、動物行動学や心理学、脳科学から様々な例が引きながら論を進めるというものである。それぞれの引用自体は興味深いものだが、それらの引用をつないで、主張につながる糸が見えてこない。本書の最終的な主張は、帯にも書いてある「伽藍を捨ててバザールに向かえ!」「恐竜の尻尾のなかに頭を探せ!」なのだが、その結論自体は、ここ5年間くらいで言い古されているものなので、理解できるとしても、「自分を変えることはできない」「他人を変えることもできない」ことから、どうつながっているのか、まったくわからなかった。

理解するために、もう一度読み直そうか悩む。でも、きっと、読み直しても理解できない気がする。

あっ、ちなみに、私の考えは、「自分を変えるのはかなり難しい」そして、「他人を変えるのはもっと難しい」である。だからといって自己啓発や宗教を否定するつもりはまったくない。


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