ORCID

3月15日に宮入暢子(ORCIDアジア・太平洋地区ディレクター)さんをお呼びして、ORCIDの話を伺いました。

学術情報の問題の一つに、「名寄せの問題」があります。私はかなり特殊な名前なので問題がなく、Pubmedで「t monkawa」検索すれば、私の論文リストを簡単に作ることができます。しかし、よくある名字の方の論文リストを作ろうと思ってもなかなか難しいです。中国や韓国の研究者は名字のバリエーションが少ないので、さらに難しいです。同姓同名の問題以外にも、所属機関の異動、結婚の際の改姓など、さまざまな理由で、論文リストの作成には困難があります。そこで、「マイナンバー」のように、研究者に固有のIDを付与する動きが高まっており、世界中の研究者に対して固有の識別子を与えることを目指して、ORCID(オーキッド)が2010年に立ち上がりました。ORCIDはOpen Researcher and Contributor Identifierの略です。

ORCID IDは16桁の数字で構成されたIDで、ORCIDのサイトhttp://orcid.orgで、研究者自身が申請して、ORCID IDを取得します。

ORCIDは急速に浸透しており、最近では、The Royal Societyが発行する各ジャーナル、Science、PLOS、EMBOなどの学術誌に投稿する際には、ORCID IDの入力が必須になっています。さらに、MUSTではないものの、ORCID IDを入力できる雑誌が3000誌を越えています。将来的に、全世界の研究者がORCID IDを取得すれば、研究者は様々なメリットを受けられることになります。

論文リストを簡単につくれるということもメリットの一つですが、ORCID IDは、名寄せ問題の解決から、さらに大きな広がりを見せつつあります。

たとえば、ある雑誌では、論文の査読をすると、査読終了後に、この雑誌の査読をおこなったという証明をしてくれ、それが、ORCIDの画面に表示されるようになります。つまり、論文査読が研究者の実績として、きちんと証明されることになります。

英国のウェルカムトラスト財団は、研究費の申請の際に、ORCID IDの入力が必須ですが、研究費を取得した際には、研究費を取得した旨がそのまま、ORCIDの画面に表示されるようになっています。日本の科研費もこのような仕組みになるといいですね。

また、ORCID IDを論文投稿や査読などのログインの際に使うことができます。そうすると、所属施設が変わった場合も、ORCID側の登録情報を変えておけば、いちいちログインの際に変更したり、様々な個人情報を書き込まなくても良いのです。

ORCIDは非営利団体で、加入会員からのメンバーフィーで運営されています。メンバーは450を越える出版社や組織、大学などですが、いまのところ、日本の大学は、まだ、メンバーになっている大学はありません。

ORCIDはインフラであって、研究者にとって大きなメリットのある仕組みですが、研究者が主体的に参加して、はじめて機能するものです。すでに、ORCID IDを取得されている方もいらっしゃると思いますが、まだのかたは、是非、ORCID IDを取得してみてください。

ちなみに、私のORCID IDは
http://orcid.org/0000-0002-7876-7661
です。

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