Google Scholar その2

昨日に引き続いてGoogle Scholarその2です。

■Google Scholarの「Cited by」

文献ごとの引用関係がわかるデータベースとしてはWeb of Scinceが有名です。雑誌ごとの掲載論文1報あたりの年間の平均引用回数を指標化したものはインパクトファクターとよばれ、近年では雑誌の優劣の重要な指標になっています。各論文ごとの引用回数や引用している論文へのリンクはWeb of Scienceの「Times Cited」機能で実現されており、Google Scholarの「Cited by」は機能としては同じものといえます。Web of Scienceの詳しい説明についてはこちらをご覧下さい。

引用情報が重要なのは引用回数自体が論文の重要性を判定するひとつの指標であるだけでなく、逆引き機能として利用できるという点です。たとえば、2000年に報告されたある論文に目を付けて、関連論文を探そうと思った場合に、2000年以前の関連論文は引用文献としてすぐに見つけることができます。しかし、2000年以降の関連論文を見つけるのは大変なことです。その場合、Web of Scienceの「Times Cited」のリンクやGoogle Scholarの「Cited by」のリンクをたどることで、その論文を引用している論文(2000年以降に報告された)を探せるのです。

Web of Scienceは契約料がとても高いデータベースで、 契約をしていない大学図書館も多いようです。無料で引用関係が調べられるデータベースは現在のところ、Google Scholarしかなく、その点だけでもGoogle Scholarの存在価値は高いといえます。

しかし、問題になるのは、Web of Scienceで計算された引用回数とGoogle Scholarで計算された引用回数が同じかという点です。 そこで、その点を実際の論文を使って検証してみました。検証に使ったのは私が書いた6つの論文で、2006.1.14現在での引用回数を示します。

  Web of Science Google Scholar
JASN, 13:1172-8, 2002 27 30
KI, 58:559-68, 2000 16 18
JASN, 11:65-70, 2000 25 10
KI, 53:296-30, 1998 18 16
BBRC, 239:527-533, 1997 70 54
JBC, 270:14700-14704, 1995 133 95

これを見ると、1つの例外を除き、Google Scholarの方が引用回数が少なく、検索対象として拾っている論文の数が少ないことがわかります。また、両者の差は論文によってかなりばらつきがあります。

どのような文献を引用文献としてリストしているのかを実際に眺めてみると、Web of Scienceの方が検索対象の雑誌の範囲が広いだけでなく、Google Scholarの場合は、JASN, 11:65-70, 2000 を引用している論文がKI誌に複数あるにもかかわらず、ひとつしかリストアップしていないということがわかりました。つまり、Google Scholarの検索範囲は必ずしも雑誌単位ではないということです。現時点でのGoogle Scholarの「Cited by」に示される数は、正確な引用回数として使えるようなものではなく、あくまでも目安に過ぎないと言えます。

Google ScholarのCited byがより正確な指標になるためには、Google Scholarがどのような論文を検索対象としているのかがきちんと公開されないといけないでしょう。ただし、Web of Sceinceが使えないという人も多く、Google Scholarは無料で提供される引用関係を含むデータベースとして貴重なデータベースであることには違いがありません。

 

■まとめ

では、私はGoogle Scholarを使うかと聞かれれば、ほとんど使わないと答えますが、それは現在、引用関係を調べるためのデータベースとしてはWeb of Scienceが自由に使えるという恵まれた立場にあるからで、使えなくなれば、Google Scholarを使う機会は増えるでしょう。

関連情報はバイオ研究情報Google Scholar をご覧下さい。

アーカイブ

過去ログ一覧