本の紹介「困った状況も切り抜ける医師・科学者の英会話」

「困った状況も切り抜ける医師・科学者の英会話」

著者:Ann M. Körner著 / 瀬野 悍二訳・編、税込価格:¥3,780、出版:羊土社、ISBN:475810834X、発行年月:2007.5【bk1】【amazon.co.jp】【目次

Körner & 瀬野コンビによる「相手の心を動かす英文手紙とe-mailの効果的な書き方bk1】【amazon.co.jp】【目次】【当サイトの書評日本人研究者が間違えやすい英語科学論文の正しい書き方」【bk1】【amazon.co.jp】【目次】【当サイトの書評】に続く第三弾。今度は、英会話の本です。

このシリーズの特徴は、ネイティブスピーカーが書いて、日本人が翻訳しているという点です。他書では、日本人が書いて、ネイティブスピーカーが英文をチェックしているというパターンが多いです。ネイティブスピーカーが執筆する場合、なかなか日本人の陥りやすい間違いに言及できず、的外れなものとなりがちですが、長年日本人の英語を見てきたKörner博士はポイントをしっかりとらえており、ネイティブスピーカーならではの説明に深みがあります。

本書のタイトルが「困った状況も乗り切る」とあるように、日本人がもっとも苦手とする、相手に反対の意志や見解を効果的に表現するというNegative Interractionsについて多数の例文を掲載しているのが特徴です。たとえば、留学前の約束と違う場合、どのようにボスに意見すべきかを、「軽く不満を述べる場合」「強く抗議する場合」「それでも駄目な場合」というように状況に応じて非常に実践的な例文が掲載されています。また、学会中の夜のパーティでどのようにふるまうべきなのか、講演後の質問であからさまな敵対的質問にはどのように答えるべきなのか、などについても具体的に記載されています。本書は研究者・医師向けの英会話の本であると同時に、英語圏における研究者・医師の慣習・行動規範を知るための類を見ない書籍となっています。

欄外などを使って英語本来のニュアンスを伝えようとするKörner博士、そして訳者の瀬野先生の、誠実な本作りにひたすら敬服します。また、添付のCDの出来も白眉であり、リスニングの教材としても一級です。本書を含むKörner & 瀬野コンビによる3冊は、留学を目指す人を含め、多くの研究者・医師のバイブルと言えるものだと思いますが、その中でも、本書はmust haveアイテムであると思います。


研究者のための英語に関する書籍は「研究者の書棚:科学者のための英語本」をご覧下さい。

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