佐藤正午のおすすめ本

この記事は、実はだいぶ前に書いておいたのだけど、佐藤正午さんの『月の満ち欠け』が直木賞の候補に選ばれたので、受賞するにしても、受賞しないにしても7月19日にアップしようと思っていました。見事、直木賞受賞おめでとうございます。

昨年末、日本橋の丸善書店で見かけて、「鳩の撃退法」を買った。僕にとっては、かなり例外的な買い方だった。最近は、ハードカバーの本はなるべく避けているし、特に、上下巻に分かれているような本は、努めて避けている。

佐藤正午という作家を、初めて読んだ。「鳩の撃退法」が、どれくらい面白かったかは、昨年の僕のMy best fictionに選んだくらいで、相当面白かった。

僕が知らなかっただけで、佐藤正午は、たくさんの小説を書いている。「鳩の撃退法」以来、遡って、次々と彼の著作を読んでいる。「身の上話」、「アンダーリポート」、「ジャンプ」。どれも素晴らしい。今年の4月には、「月の満ち欠け」という小説が出て、むさぼるように読んだ。

その中でも、「ジャンプ」を読んで、あっと驚いた。

僕は、この1年くらい、本気で、小説を書こうとしているのだけれど、この小説と、僕の書こうとしていた小説の基本的なストラクチャが、とてもよく似ていたのである。もちろん、舞台設定やディテールは全く違うのだけれども、コアになる部分は、よく似ている。

佐藤正午の、どの作品にも通じているのが、偶然に起こる運命的な出会いだと思う。表面的には、ミステリー的な要素を持つ、ラブストーリーであり、小説のストラクチャは、かなり凝っている。時に、難解なほど凝っている。

小説の語りについても、非常にたくみである。人称の選択(一人称か、三人称か)、視点の問題(一人称一視点なのか、三人称一視点なのか、あるいは、1人称と三人称を交互に使うのか)、物語る順序(時間の経過を追うのか、現在と過去を交錯させるのか)など。

とりあえず、僕が読んだ本を紹介しておきます。☆が多いほど、おすすめです。


鳩の撃退法☆☆☆☆
デリヘルドライバー、直木賞作家の津田が主役のミステリー。ダメ男を書かせたら、天下一品の佐藤正午らしい作品。ちょっと長くて、下巻の途中は中だるみするけど。山田風太郎賞受賞作

鳩の撃退法 上
鳩の撃退法 上
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佐藤 正午
小学館
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月の満ち欠け☆☆☆
生まれ変わりという、ありえないことがテーマだけど、最後まで読み進めると、生まれ変わりがあってもおかしくない。くらいの気持ちになります。SF的ミステリー。

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月の満ち欠け
月の満ち欠け
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佐藤 正午
岩波書店
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身の上話☆☆☆
書店の店員が、突然、東京に行き、宝くじで2億円当てた。自分の意思とは違う形で事件が次々とおこることに身を任せていく女の話。ミステリーかな。テレビドラマ化もされています。

身の上話 (光文社文庫)
佐藤 正午
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アンダーリポート☆☆☆☆
交換殺人をテーマにしたミステリー。

アンダーリポート/ブルー (小学館文庫)
佐藤 正午
小学館 (2015-09-08)
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ジャンプ☆☆☆☆☆
コンビニに出かけていくと行って帰ってこなかった彼女。ミステリー的恋愛小説。僕の一番のお気に入り。

ジャンプ (光文社文庫)
佐藤 正午
光文社
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5☆☆☆
結婚8年目の記念にバリ島を訪れた中志郎と真智子。旅行中に起こったある出来事がきっかけで、志郎の中に埋もれていたかつて愛の記憶が蘇る。SF

5 (角川文庫)
5 (角川文庫)
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佐藤 正午
角川書店(角川グループパブリッシング)
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Y☆☆☆
時間を逆戻りできる北川によって、生み出された2つの人生。SF恋愛小説。

Y (ハルキ文庫)
Y (ハルキ文庫)
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佐藤 正午
角川春樹事務所
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永遠の1/2☆☆☆☆
もう一人の自分によって振り回される男の人生。デビュー作。すばる文学賞受賞作。

永遠の1/2 (小学館文庫)
佐藤 正午
小学館 (2016-10-06)
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