インプットとアウトプット

なんとなく、気分的にもゆったりしているので、以前から、書こう、書こうと思っていた。エントリーを書くことにしました。

私の今年1年の目標は何だったかというと、「基礎力を蓄えること」でした。これを一度、自分の言葉できちんと説明しておきたいと思います。少し長くなりますが、インプットとアウトプットの話から始めたいと思います。

学習(インプット)する方法には様々な方法がありますが、私がもっとも有効と考える学習方法は、アウトプットすることです。このことについては、以前、「学びたければ、他人に教えろ」というエントリーにも書きました。学生でなくなると、日々の仕事に追われて、まとまった学習時間を確保することは難しくなります。英会話教室に通ったり、通信学習をしたり、というのは、私にはあまり向いていません。そこで、私のLifehackとしては、何かを学びたければ、それを他人に教えることをゴールにして無理矢理設定するようにしています。たとえば、低ナトリウム血症について、じっくり勉強したいなと思ったら、1ヶ月後に、研修医に講義をしますと宣言してしまいます。1時間の講義をするとなると、20時間から30時間は、準備が必要です。テキストをいくつか読み、最新の文献も読み、講義の組み立てをして、Keynoteスライドを作る。かなりの労力が必要です。この準備の過程が、すべて自分の学習の過程になるのですが、重要なことは、このように他人の目にさらされるアウトプットを出す時には、きちんとしたまとまりとして完成させなければならないということです。単に教科書を読んでそのまま話すのではなく、自分の頭で考え、整理するという過程が必要になります。この過程を踏むかどうかが学習の定着に重要なのです。また、出来上がった、プレゼンテーションスライドは、あとで、自分の知識を振り返るときの格好の材料になってくれます。

アウトプットの形式は、講義だけではありません。原稿という文書でもいいです。私にとっては、このブログも、趣味のことなどをアウトプットする貴重な場になっています。むりやり講義をされる学生や研修医もかわいそうなので、できれば、講演や原稿を頼まれた方がいいですね。それでお金がもらえたらありがたいですが、自分がやりたいと思うことなら、無料だってよろこんでやります。だから、講演や原稿は頼まれたら、基本的に断らないようにしています。そうやって、この10年くらい、アウトプットを駆動力にして、インプットを増やし、自分の「学び」のポイントを蓄積してきました。

私のおおざっぱなイメージとして、1のアウトプットを出すとなると、少なくとも10くらいのインプットが必要になると見積もっています。たとえば、すでに、ある分野の知識が3くらいあったとしても、講義したり、原稿を書くには、10くらいまで増やさないと、いいアウトプットは出せないのです。でも、そこで頑張っておけば、増やしたインプットが自分の貯金として増えていくというイメージでしょうか。

ただ、ここ数年、少し、状況が変わってきました。

講演も、原稿も基本的には断らない。その基本方針を貫いていたら、頼む人も頼みやすいのでしょうか、次から次へ、依頼が舞い込んでくるようになりました。自分の専門とまったく違うという領域の原稿の依頼が来たこともあります。でも、せっかく、勉強できる機会だからと断らずに受けてきました。和文の原稿でも、今まで一度も書いたことのない領域だったりすると、やはり、2週間くらいの時間がないと、10のインプットをため込むことはできません。講演や講義でも、同じくらいの時間が必要です。それなのに、月に3つも4つもそんな仕事が舞い込んでくるようになりました。たくさんアウトプットを出していると、その分野の専門家と思われるのか、似たような依頼が増えてきます。似たような仕事であれば、10のインプットを入れないでも、前回の仕事の時にため込んだインプットの蓄えを使って、「やっつけ仕事」ができるようになります。本当は、新しい文献とかを読んで、最新のものを書きたいと思っていても、忙しさに流されて、インプットの蓄えを使って、「仕事をこなす」ようになってしまいました。

そんなことを1年、2年と続けていると、いよいよインプットの蓄えがなくなってきます。授業や講演も、過去の授業の再利用。2週間の連続公演のコンサートであれば、千秋楽に当たった人はラッキーかもしれませんが、私の場合は、自分のためにアウトプットしているのです。2週間も同じことをやるなんでいやです。常に、新しいことにチャレンジして、自分で何かを得たいからアウトプットを出しているのです。だから、こうやって、「焼き直し」みたいなアウトプットをやっていると、自分の「蓄え」がどんどん減っていくように思うのです。この1年間は、本当に、自分の蓄えが減ってきたなというのが実感でした。

だから、今年は、本当に自分がやるべきこと、自分がやりたいことにアウトプットの場を絞ろうと思っています。本の出版の話や、本業とは関係のない原稿の話はいくつか断りました。

特に、今年は、自分のキャリアが大きく変わったので、基礎的な勉強からやり直さなければならないと思っています。たくさん本を読み、文献を読み、講演会や、学会にも参加して、基礎力を蓄え帯と思います。アウトプットは、それら、自分が学びたいこととベクトルがあっているものに絞りたいと思っています。

今年の前半は、思うように、インプットをため込むことが出来ませんでした。あと半年を切ってしまいましたが、なんとか、立て直したいと思います。

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